第44話4月29日①

 目覚めた俺は、ふくよかな女性から自己紹介を受けた。なんでも、世界を跨いだ神の一柱である大地母神様だとか。そうして大地母神様から説明を受けた。


 大地母神様から世界の存続のため必要と判断されて、俺が眠っている間に俺たち全員に不死身の祝福が授けられているという。大地母神様が死にそうであれば、俺から精力が供給され。俺が死にそうであれば、大地母神様から精力を供給される。滅ぶときは同時でないといけないとのこと。


 そこに彼女たちもサブとしてシステムに組み込んだため、肉体的に滅ぶことはあり得ない状態になった。心が死んでも、肉体が残るため世界が滅ぶことはもう考えなくてもよくなったという。けれどそうなったときは、肉体はそのままに転生させてくれる手筈にもなっているらしい。


 仮定の話だが長生きしすぎて心が死ぬようなことになるとすれば、最低限の記憶を残して順番に転生させると言われた。


 そもそもとして世界に不死身の存在が増えたために世界から力が失われて大地母神様の力も喪失しかけていたため、不死身の存在から力を取り戻すために纏めて心を殺して肉体はそのままに転生させ力を天使に回収させることを繰り返していたらしい。


 これについては本人含め関係者の記憶を削除して慎重に外に転移を行っていたそうだ。吸血鬼は太陽で死ななくなってきていたため、もし俺たちが救っていなければ次は溺死の休眠状態で永遠と眠ることになったそうだ。


 苦しむことが確定している生と、永遠に眠り続けることのどちらが幸せか俺にも分からない。大地母神様も迷い続けていたそうだ。

 それでも休眠状態になる前にカトレアと出会えたことは幸運だったと思いたい。


 そして俺の出自についてだが、ここに転移したときに居た悪魔の男性と樹木のようになっている女性が両親らしい。


 それぞれ、色欲の大罪の悪魔であるアスタロト様と世界樹であるユグドラシル様らしい。正直、俺の両親がそんな大物だったことに驚きを隠せない。


 さらにそこに、大地母神様から全ての力を精力にするものと、力の器の上限がなくなり成長し続ける祝福も受けていたらしい。もうとっくにお腹いっぱいなのだがまだまだ話は続くようだ。


 どこまで成長するかは半ば賭けだった。闘気は身体を動かしていれば手に入れられる。そのため怪我をしにくかったり、病気にかかりにくくなったりするという。精力しか持たないために幼い頃病弱だったのだと伝えられた。避けられていたのも、無意識に周囲から精力を吸収しようとしていたからだとも。現在問題ないのは、衰弱により減る量よりも増加する量の方が多いかららしい。


 すでに、世界を賄えるだけの量があるのならもう祝福は要らないのではないかと聞いてみた。答えは一度かけた祝福は、かけた神が滅びなければ消えることはないとのことだった。それに、これからも世界に不死身の存在は増え続けるだろうから精力を増やすことは止めないでほしいと頼まれてしまった。


 大地母神様が滅ぶことは世界が滅ぶことだし、同時に俺も皆も死んでしまうことになる。それに、そういう事情ならと引き受けることにした。


 ちなみに両親は今度ゆっくりと話そうと伝言を残して、この場を去っているらしい。今すぐ会ってもどう接して良いか分からなかったと思うので、本音を言えば助かったというところだ。と思ったら、どうやらそうなることを察せられてしまっていたとのこと。


 さらに両親は大地母神様に協力を要請されていて、ちょくちょくと俺の様子を見ていたとのこと。そうしているうちに露店の店主としてアスタロト様が俺に接触して、時期を見計らっていたという。


 話に戻るが、ここに成長した状態で辿り着くための時間を稼ぐために、世界の存続に最低限必要な人物を除いて世界の有力者から力を吸収していたらしい。それによって死んだ者は居ないそうだ。既に世界の存続に必要とされた者、力を吸収され続けた者の全員への謝罪とお詫びで納得してもらえているという。


 そのなかにはガーネット様たちの契約主の方たちも含まれていたという。こんな形で疑問が解決するとは思わなかった。


 皆も祝福を受ける際に同じ扱いをし、納得しているというので俺から何かを言うこともない。あぁ、でも一言だけ。スイセンとのデートを本来の形で楽しみたかったとは伝えた。よく分かっていない様子ながらも謝罪の言葉をいただいたので、俺としてはこれで十分だ。


 その他にも、クロユリを呪い、ナデシコとクロユリの転移事故も大地母神様が行っていたそうだ。もはや手広くやり過ぎて、全てが大地母神様の手のひらの上だった気分になってくるがそれでも確実とは言えなかったとのこと。


 最後に不死身の存在は転生を繰り返し永く生きれば、いずれ天使となり、神になるそうだ。天使とは吸血鬼たちを助けに過去に飛んだ先に居た、白い翼で頭に金の輪が浮いている存在とのこと。


 カーミラ様に首を切られた際に不死身だとばれないために、召喚獣が死んだと見えるように転移させていたらしい。そして、神にまでなれば永く生きることに苦痛を感じることはなくなり不滅の存在になるという。


 なんだか話が壮大すぎて全部を理解できたか怪しいが、ひとまず俺が生きている限り世界は存続すること。俺が神になることが出来れば、世界が磐石となることだけ分かればよいとのことだ。


 とりあえず今は……皆に会いたいな。

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