第42話4月25日②

 午後はクロユリとデートだが、クロユリはお昼寝デートがしたいとのこと。

 いつものように膝を叩いてクロユリを誘う。クロユリは目尻をさらに垂れさせながら、とことこと寄ってきて頭を乗せる。そのまま撫でてクロユリがゴロゴロと喉をならすのを聞きながら眠るまで話をすることにする。


「クロユリもだいぶ身長が伸びたよね」


「だ、ダメでしたかっ!?」


「そんなことないよ、成長が嬉しいって話し」


「わ、私、ナデシコお姉ちゃんみたいに素敵になりたいです!」


「ナデシコがダメって訳じゃないけど、クロユリにはそのままで居てほしいかな」


「そ、そのままですか?」


「そう、そのまま可愛いクロユリで」


「えっ!?わ、私、可愛いですか!?」


「そう。こうやって何度伝えても可愛い反応をするクロユリだよ」


「そ、その私、自信が持てなくて……」


「それならそれで構わないよ。いつか分かるまで、ううん、分かっても可愛いって言い続けるから」


「そ、それは私の心臓がもたないかもです」


「それは大変だ。クロユリの心臓を鍛えるために、毎日可愛いって伝えないと」


「な、なんでそうなるんですかっ!?」


 本当にクロユリは可愛い反応を返してくれる。そうやって笑っていると、クロユリが。


「お、お兄ちゃんは可愛いって言ってくれますけど、このままのペースで身長が伸びちゃったらお兄ちゃんの身長を越えちゃうかもです。そ、そうなっても可愛いって言ってくれるんですか?」


 確かにクロユリは強制的に召喚獣に覚醒したためか、他の皆よりも多くの精力を供給されても平気だ。その供給された力を本来の成長に当てているのだろう。確かにこのペースで成長していけば、そう遠くないうちに俺の身長も越えることだろう。けれど。


「たとえそうなっても、俺は可愛いって言い続けるよ。だって身長が伸びても、クロユリはクロユリでしょ?そこは変わらないよ。あぁ、でももしかしたら可愛いクロユリから綺麗なクロユリにはなっちゃうこともあるかもしれないね」


「そ、そうなんですね」


 安心したのだろう。そう言ってクロユリは眠ってしまった。俺としては可愛いクロユリでも綺麗なクロユリでも構わない。どんなクロユリだろうと俺は。


「好きだよ、クロユリ」


「ひゃっ!?わ、私も好きです!」


 眠ったように見えたが、まだ起きていたらしい。それとも。


「ごめん、クロユリ。起こしちゃったかな?」


「い、いえ、そんなことはないですけど。で、でももう眠れそうにありません」


 そう言うクロユリの顔は真っ赤だ。これは確かに眠れないかもしれない。そういうことなら今、渡してしまおう。


「はい、これ。クロユリに」


「あ、ありがとうございます!今、着けてもいいですか?」


「今かい?クロユリがそうしたいなら俺は構わないけど」


「た、多分、大丈夫だと思うんです!」


 そうしてクロユリが身に付けたのは、黒いお洒落なベルトだった。


「意外と着物の上からでも似合うものなんだね」


「う、嬉しいです!」


「クロユリはきっと、これからも成長を続けると思うから。その時にも使えるようにって選んだんだけど」


「た、大切にしますねっ!」


「そうしてくれると俺も嬉しいよ」


 そのあとはまた膝枕をしながらクロユリと話を続けた。もうすっかり目が冴えてしまったようで、そこから眠ることはなかった。

 デートの時間も終わり、皆が戻ってくると。クロユリの姿を見たアスターが、着物にベルトっすか。案外、似合いますっすね。これは研究するしかないっす!何て言っていたので、このファッションがもう一人増えることになるのかもしれない。

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