第14話4月6日①
今日、朝食を食べた後さっそくリコリスが出掛けたのでカトレアとスイセンにも俺の過去の話をすることにする。
自分では面白い話ではないと思うのだが、それでもお願いされてしまった以上はリコリスへしたように話すつもりだ。
「それじゃあ、早速話していくけど。あまり面白いような話じゃないから、期待しないでほしい」
カトレアとスイセンが頷いてくれたので話し始めることにする。予防線も張ったし、期待はずれと言われることはないだろう。
「幼い頃はかなり病弱で、ずっと寝込んでいたんだ。そんなだから薬の値段もばかにならない。そういった理由から孤児院を転々としていたよ。うちで面倒見きれるか、疫病神ってさ。それでも、最初は受け入れてくれるところもあったからなんとか生き延びることは出来た。だから、これでも感謝はしているんだ。」
ここまで話した段階で、スイセンは表情が変わらないがカトレアは顔をしかめている。ほら、やっぱり楽しい話ではない。
「そうして各地の孤児院を転々としていくなかで、なんとか体を動かせるようになってきた。でも、皆の輪の中に入っていこうにも受け入れてもらえなかった。俺の何が悪かったのか、何が気に入らなかったのか分からない。今度は、孤児院のなかで打ち解けられないから、という理由でまた色んな孤児院を回ったよ。あぁ、そうそうその中でスイセンが今着ているような服を着物と知ることもあったんだ。」
スイセンは表情を変えず、いやこれは少し共感してくれているかもしれない。スイセンも孤独だったからな。カトレアはもう歯を食いしばっている。後もう少しで終わるから、後少しだけ耐えてほしい。
「そうして今年、ここサモンズ学園に連れてこられて3ヶ月間勉強に打ち込んだよ。持っている力が精力のみで、評価上限を越えることから学友からはエロ魔神なんて揶揄されてしまったけど。でもここでは、先生方に認めてもらえたんだ。嬉しかったよ。なにせ好意的に見てくれた人は初めてだったから。だから、俺は親の顔も知らなければ自分の年齢すら知らないんだ」
そう言ったとき、スイセンはやはり表情は変わらないがどこか気遣わしげな雰囲気を発して。カトレアはもう涙目になっていた。
リコリスに話したときにはなかったけど、もう少しだけ言葉を足す。
「今はリコリスを召喚して、カトレアとスイセンにも出会えてよかったと思っているんだ。もう三人は、俺にとってとても大切で。今がとても幸せなんだ。失ってしまうんじゃないかと怖いほどに」
そこまで告げるとカトレアが俺を抱き締めた。
「よく、よくぞ耐えた妾の半身よ。これからは妾たちが居る。安心せよ、妾たちは居なくならぬ。ずっと、ずっと一緒じゃ」
「ん……。私も何が出来るか……分からないけど……。それでも、これからはずっと……一緒に居る……」
「ありがとうカトレア、スイセン」
リコリスもこの話をしたときは、これからは私がずっと一緒に居ますから!って涙を流しながら伝えてくれたっけ。
あぁ、やはり今。俺は恵まれている。
そこでリコリスが、ちょうど帰ってきたようだ。
豪華な食事を作ると言ってくれていたから、今から楽しみだ。
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