第4話新たな関係者
10年前に自殺した、「寺前」と言う男を黒井川は調べた。
「寺前邦郎」。
戸籍の謄本を調べると寺前は、居酒屋まさきの大将の奥さんの兄であることが判明した。
黒井川は変な汗をかき、アイスコーヒーを飲みながら喫煙した。
店が始まる前に、黒井川は川崎を連れて平岡恵美に会いに行った。
「黒井川さん、今日は何ですか?まだ、開店前に」
と、大将の平岡利樹が言うと、
「奥さんに話しをお聴きしたいと思いまして」
と、川崎が答えた。
「オイッ、恵美!黒井川さん」
と、言うとエプロン姿の恵美が出てきた。
「あら、黒井川さん」
「どうも、少しお話をお聞かせください」
「何の事でしょう」
「寺前邦郎さんの妹さんですよね」
すると、恵美の顔から笑みが消えた。
「……はい。兄です」
「お亡くなりになられてますね」
「……自殺でした」
恵美は涙目になっている。
「昨日、亡くなった立神昇さんと同じデパートで勤務されていましたが、何かトラブルなどはございませんでしたか?」
利樹は恵美の背中をさすりながら、
「恵美のお兄さんは、真面目で明るい方でした。しかし、トラブルなどは耳にしていません」
「そうですか」
「兄と立神さんとの関係は知りません」
「奥さん、横領の話しなどは」
と、川崎が突っ込んだ質問をした。
「……知りません」
黒井川と川崎はお礼を言って、店を出た。
「川崎君、どう思う?」
「立神を恨む理由がある人間が多数いる事でしょうか?」
「今回の事件は単独犯ではなさそうな気がするね。この町は、立神を恨む理由がある」
「どうします?」
「何が?」
「聞き込みです」
「取りあえず、平岡さんと長年の付き合いの小林先生の話しを聞こうか?」
「はい」
車は立松町の小林クリニックに向かった。
午後診が始まる前に、小林千紗と2人は会話した。
「先生、寺前邦郎さんをご存知ですか?」
「寺前?……あぁ、恵美ちゃんのお兄さんね」
「どんな、方でした」
「明るくて、面白い人でしたよ」
「自殺されましたが」
「……その直前位にうちのクリニックで精神安定剤を処方しました。何か悩んでる様子で。うちは心療内科ですから」
「悩んでる?」
「はい。でも、理由は知りません」
「小林さんのお友達とはどんなご関係で?」
「元、うちの患者さんです。皆さん、不眠症で睡眠薬を処方した事があります。しかし、直ぐに良くなられて、岡田君とプライベートで会うようになり、今は岡田君のお友達の貴子ちゃんとも一緒にまさきでお酒を飲んでいます」
「先生、横領の話しを聴いた事がありますか?」
「いいえ。知りません」
「そうですか。うちらも、仕事が終わったら、まさきで飲みます」
と、黒井川が言うと小林はニコリとした。
帰りの道中、
「みんな、隠してるね。過去の事を」
「……黒井川さん。これはかなりの難事件になりそうですね」
黒井川は、タバコに火をつけた。
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