第14話
編入前慌ただしいの手続きを済ませている間に、あっという間に木曜日になってしまった。ふゆちゃんの家に行くのは、明日。
しかも時刻は22時…本当の意味でキャンセルする余地もなくなった。
ふゆちゃんに脅迫まがいの宣言をしてから数日が経ったが、未だに返事は無い。
「……本当に大丈夫かな」
不安になりながらも、明日の経路を確認する。片道1時間半……地味に遠いな。
3人に会うだけならメイクする必要もないかと思いつつ、さすがにズボラで再会はしたくないというプライドが邪魔をする。
「えーー高校の頃どんなコスメ使ってどんなメイクしてたっけ……」
写真アプリを開き、見返す。
4人で撮った写真の私をズーム。
次は、ふゆちゃんと撮った写真を。
秋也、春希…………私の高校時代の写真って、本当にあの3人のしかないんだな、なんて不思議な気持ちになったところで、見慣れない写真が出てきた。
「あ、ミキちゃん」
私が高校でもっとも仲良かった女友達だ。
とはいえ、いつも一緒にいるわけではなく、ミキちゃんにもミキちゃんの居場所があった。それでも私たちは休み時間や合間を見つけてはお互いに会いに行き、2人でゲラゲラ笑っていた。そんな時の1枚、笑顔の写真。
「ミキちゃんも最後に話したのは3ヶ月前くらいか〜」
高校を卒業した後、私たちは1シーズンに1回は会おうと約束していた。春、夏、秋、冬。年4回でちょうどいい報告会みたいなスタイルだった。また春の報告会のお誘いが来る…はずだけど、就活の関係か未だに連絡はない。
最後にミキちゃんに会った時に、少しだけふゆちゃんの話をした。同級生だからもちろん知っているし(会話した事はないみたいだけど)、なにか掴めたらいいなと思って相談したら、鼻で笑われた。
「ほおっておけば、そのうち戻ってくんじゃない?」
何度も聞いた言葉。
みんなが口を揃えて言う言葉だった。
「……そう、だよねぇ、ははっ」
笑って誤魔化して、目を伏せた。
私には、ふゆちゃんが自然に戻ってくるなど絶対にないことだと思えてしまう。でも、反論する気もないし、反論できる気もしない。全てを諦めて、同級生にふゆちゃんの話をするのをやめたのは、その頃からだった。
「って、違う違う…本当に行っていいのか、なんだよなぁ」
既読のつかないふゆちゃんへのLINEを見て、今度は4人のグループに送ることにした。
『いよいよ明日だけど、ふゆちゃん嫌だったら言ってね』
するとすぐさま既読が2つく。
『待ってろよ』『楽しみだわ』
秋也と春希だった。
それでも返信はない。
『2人にも会えるのめっちゃ嬉しい』
そう送ると、既読はついたまま…きっと各自、返信に困ったんだろう。私はいつも、返信に困らせてしまうような女だ。
しばらくして『照れるだろ』なんて音声が再生されるスタンプが送られてきて、音に驚く。
ふとグループ名を見た。
『春夏秋冬』――誰がつけたのかわからないが、良いグループ名だ。4人のグループ、一生3にならない既読。
はぁ、とため息をついて、お風呂に入ろうともう一度画面に目をやった時だった。
既読が3になっていた。
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