紅髪のマキナと無貌のデウス
第12話「荷車、人気だよな。アタシも欲しくなる」「原始的ではありますが実用的ですからね」「人乗っけて、走ったり、ぶつけ合ったり見てるだけで楽しいよな」「僕の知ってる荷車と用途が違いますねえ……」
第12話「荷車、人気だよな。アタシも欲しくなる」「原始的ではありますが実用的ですからね」「人乗っけて、走ったり、ぶつけ合ったり見てるだけで楽しいよな」「僕の知ってる荷車と用途が違いますねえ……」
アタシが買い漁ったでっかい荷物を背負っていつもの場所にいくと、デウスはアタシ以上に荷物を持ってきていた。というかあれ荷車だ。
「すげえなあこれ!買ったのか?いや、作ったのか!」
しかも単純な奴じゃあない。押しても引いても使えるように持ち手が付いていて、荷台も屋根付き、パワーサポートまで付いてるからどんなに乗せても楽に動かせるやつだ。都市で知り合いが自慢していた。あの人は荷物じゃなくて、もっぱら人を乗せてたけど。
しかもそれより一回り以上でかい。
「昔使われていた物の設計図ある程度模倣しました。改良したい点は多いですが、現状必要な積載量と耐久性は満たしていると思います」
もうほとんど車じゃないか?と思ったが、自走できるほどの出力は無いらしく、パワーサポートはあくまで補助動力らしい。
早速アタシの持ってきた荷物を積む。どんどん積む。
「よくこんな量の荷物背負ってきましたね……」
「いろいろ検討したんだけど、捨てるものがなかったんだ」
何が必要なのか悩んだが、やはりどれもこれも必要なものばかりだった。その結果いろいろかさばってしまったのはしょうがないことだ。寝具が特にデカかった。
デウスも荷物はアタシに負けず劣らず、多かった。サイズはアタシのより小さいが重かった。
「何入ってんだ?これ」
「観測機やら、射撃用のドローンとかですね」
「お前も戦うの?」
「やっていいならやりますが、狩りはマキナさんの仕事、という約束は忘れてません。サポート用です。用途は広域調査や見張り、後はマキナさんの訓練用です」
「こないだ言ってた小型にしたやつ?」
「ええ、以前の訓練よりはだいぶ教育強度が高いので注意してくださいね」
「ほーん、楽しみじゃん」
デウスの訓練は悪くない。やってて飽きない。飽きがこないってのは大事だ。爺さんもハンターやるなら狩りは生活の一部にしろって言ってたしな。
荷車を引きながら、基地に向かう。こんだけでかい荷物ひいてたら嫌でも目立つので初めは辺りを警戒していたが、誰も付いてきてないし、害獣の気配もない。
途中でデウスに頼んでアタシも荷車を引かせてもらった。荷車はかなりの荷物が乗っているがパワーサポートが聞いているのか全然重くない。デウスを乗っけても重くない。
アタシが引くの一番速いなこれ。
「後をつけてきているモノは居ないようですね」
「アタシも特に気配は感じない。開けちゃってくれ」
こんなとこまで隠れて付いてくるやつなんていないとは思うけど一応警戒はしている。割ることしているわけではないが、良いことをしているわけではないからな。
灰色の大地があっという間に沈み、地下への入り口は音もなくできる。眼の前で見ても何が起こってるかわからん。デウス以外には開けれられないだろこれ。
荷車から荷物を取り出して基地に運び込む。
「セイソウチュウデス」
「さんきゅー」
ゼウスの修理したスライムを踏んでブーツに付いた灰や汚れを落とす。こいつのお陰で基地はいつもピカピカ。偉いやつだ。
空いている部屋にベッドに机、敷物、基地内のアタシの部屋にお気に入りの家具を置いてみた。……思ったイメージと違うな。家で使っているものと同じものを買ってきたんだが、部屋のサイズが違うから部屋のイメージが合わない。なんかがらんとしている。部屋がでかいのだ。
部屋がでかいことはいいことだと思うけど、今の状態はいかんせん殺風景というやつだ。中途半端に家具が置かれているせいで、余った空間の寂しさが何も置かれていなかったときより一層感じる。もっとなんか買ってくるべきだったかな。でも、これ以上置くもの無いよな。ガンラックでもつけるか?今は銃一つしか持ってないけど今後増える予定だし、かっこいいからありかもしれない。
「……デウスはどうしてるかな」
あいつにインテリアのセンスが有るかは全くわからないが聞けば何かしら教えてくれるだろう。もしかしたら、すごくいい案が有ったりするかもしれない。
コントロールルームで作業するデウスを見に行くと、デウスが床を引っ剥がしていた。
こいつも意外と力あるよな。ロボだから当然なんだろうけど見た目が見た目だけに違和感がすごい。
いや、それよりもだ、
「……なにやってるん?」
部屋壊してるのか?いや、アタシらの基地とは言ったが、壊すなら相談はしてくれ。
「部屋の効率化です。ここの配線はもともと人間が動かす前提で組まれているので、それを僕用に作り替えてます」
そっかー、部屋壊しているわけではないのね。
辺りには剥がされた床、むき出しのケーブル、外されたディスプレイ、廃棄物集積所から持ってきたのか見慣れない資材や工具がそこら中に転がっている。ドローンも幾つも飛び、スライムまで動員しながら部屋を破壊、いや改装している。よくもまあここまで散らかせたもんだ。
デウスに内装の相談するのはナシだな。
……ドローンの数もずいぶん増えたな。
「何か御用ですか?部屋の改造とかで手がいるならドローンを送りますよ?」
「いや、こっち一段落したからさ、手伝おうかと」
「ありがたいですが、この部屋は大丈夫です。暇になったのなら訓練します?」
「いやお前部屋いじってるじゃん」
「高性能なのでそれくらいの両立は余裕です。こっちの仕事はほとんど判断を必要としませんから」
そういや市長さんもたくさんロボットやドローン動かしてたな。部屋の改造しながらドローンまで動かせるとは、AIってのは皆器用なんだな。
「地下2階をいじりましたので、そこでやりましょう。先ほどもいいましたが、マキナさんの運動性能を再評価したので、今日はちょっと厳しめで行きますよ」
厳しめねえ。なんだかんだこいつは人間にあまいからなあ。
いままでが赤ちゃん扱いだったとしたら、どれくらいの扱いくらいにはなるのかね?
一様大人免許持ってるんだけど。
~~~~~
「……新しいドローンデカいな。小型化って言ってた気がするけど」
地下2階に向かうアタシの後ろを四つ足の機械が3つがちょがちょと足音を立てて付いてくる。今までの訓練で使っていたとはぜんぜん違う。でかいし浮いてない、アタシの腰くらいまである。足、胴体、頭と思しき部分が付いているが、同じ太さの黒い鋼材で覆われていて、何というか直線定規だけでデザインされたみたいな見た目をしている。かろうじて配線は隠されているがフレーム部分はむき出しだ。デウスの趣味だろうか。
「特性のトレーニング用ドローン「兎もどき」です。」
ドローンからデウスの声がする。この真っ黒な機械が兎のつもりなのだろうか。角と四つ足くらいしか共通点無いけど。ロボットの感覚は人間と違うなあ。
「今日はある程度実戦を想定したパターン組んできました」
「実戦?」
「はい。マキナさんが兎と呼ぶ害獣、ファットラビットは人間と相対した際の挙動についてはデータ揃っているので、遭遇パターンに合わせてマキナさんを攻撃させます。要するにこれで攻撃するので撃退してください」
「なるほどね」
こないだのドローンと違って攻撃してくるってことか。
どれだけ本物の動きに近いかは知らないけど、楽しそうじゃん。
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