第10話 「なんでお金にこだわるんですか?」「お金って偉いことをしたら貰えるだろ?」「え?」「だからアタシは沢山お金を稼いで褒められたいんだよね」「……」

暗い。眠い。なんでこんな暗いんだ。今日は節電日だっけ?部屋の電気付けなきゃ。

「電気」

アタシが部屋のアシストに向けて決まり文句を唱えると明かりがつく。そして目に入るのは見慣れた寝室ではなく、知らない天井だった。

ああ、昨日は基地に止まったんだっけ。


「おはようございます。よく眠れましたか?」

「おはよう。よくは眠れなかったな。アタシ寝具が変わると駄目なタイプなんだよ」

親戚の家とかでもよく眠れないし。ここでもなんか変な夢を見た。あんま覚えてないけど。

電気はデウスがつけてくれたのか。なんか悪いことしたな。


「マキナさん。少しいいですか」

「なに?」

「昨日、僕の性能が原因でマキナさんは危険な目に会いました」

「スライムの話か?別にお前のせいじゃないだろ?」

昨日済んだ話だと思っていたけど。


「マキナさんにとってはそうかも知れませんが、僕にとっては僕のせいなのです」

そうなのだろうか。難しい考えだが、そうなのかもしれない。自分が納得できるかどうかという話だろうか。


「なので再発防止にパーツの精度を上げたいんです」

「なるほど」

パワーアップしたいのか。わかる。アタシも常にしたいと思っている。アタシはどうやったらいいかわからないけど、ロボットはわかりやすいよな。


「なんか欲しいわけだ」

「はい。現在この基地にある設備、使っていいですか?」

「いーよ。売らないって決めたし好きに使いな」

話が回りくどいのは、ウチのちびもそんな感じだが、最近の流行りなのかね。気にしないで勝手に使えばいいのに。そもそもここはあたしら二人のものだし。


「ありがとうございます。驚かせて見せますよ」

「期待しとくよ」

デウスのパワーアップはアタシの得だ。こいつが出来ることが増えればアタシも助かる。


飯食って、水飲んでトイレして、やることやったら今後の計画を建てよう。

「ここみたいに隠された場所とかまだあるかな?」

「ないとは言い切れませんね。この施設は特に隠蔽されていたわけでもないのに見つかっていませんでしたからね。正直都市がこのレベルの施設を見落とすとは思いませんでした」

「いや、お前以外に見つけられやつなんていないだろ。昔のデータなんて持ってる奴いないし」

むしろ、なんでデウスはそんなの持ってるんだ?

「都市の大地学者が見たらここに地下があることは一発で見分けますよ」

「あ~大地学者の人ね。あの人なら分かってもおかしくないな」

「そういった専門家は旧世界施設の探索はしてないんですか?」

「あの人今廃棄物集積所に夢中だから飽きるまで無理だな」

「期待薄ですね」

都市のハンターは興味ないこと全くやろうとしないからなあ。


「まあ、都市の情報と僕の情報を照らし合わせればなにか分かると思いますが、「でも、ここみたいにきれいに残っている可能性は低いと思いますよ?」

「そうだろうけどさ。気になるじゃん。今度都市のデータ持ってくるからさ、比べて見てくれよ」

ここみたいなのが沢山見つかればそれだけでかなりできることが増える。沢山あるならそのうちの一個くらいは都市に報告したっていい。もちろん、デウスのokが出たならだけど。なんでデウスは都市に行きたがらないんだろ?

ロボットにも縄張りってあるのかね?



「先の予定も決まったし、何日か掛けてこの辺りがっつり見回ってみるか!」

足元を固めるのは大事。爺ちゃんの本にもそう書いてあった。

「我々は一応『郊外施設修復』という名目でここに来ているの覚えてます?長く泊まるなら正式に狩りということにしないと怪しまれるかと。マキナさんが作業にめちゃくちゃ時間がかかったとかいう嘘つけるならいいですけど」

そうだった。完全に忘れてた。『郊外施設修復』受けてたじゃん。


「忘れた。じゃあ、まずはそれだな。時間あったら多少は辺りを見て回りたいけど」

「辺りの地図なら夜の内にドローン走らせて作りましたよ」

デウスがアタシのデバイスにデータを送ってくれる。渡された地図に目を通してみるとこの基地を中心に東と北には森が、西には草原が広がっている。南は帰り道だ。よく出来てるなあ。


「お、サンキュー。……地図は便利だけどやっぱ走り回らないとよくわからないな」

「俯瞰図ですからね。人間の視点とは違いますよね。地上1mで飛ばした録画データもありますので共有します?」

「いや、自分で見るは」

爺ちゃんの本には、ハンターは自分の目で見て、足で歩くことが大事だと言っていた。迷わないように目印となる木にマーキングしたり、視界の通りづらい場所や死角の多い場所なんかを書き込んで初めて狩りで使える地図、ハンターの地図になる。

こういうのは普段からやるのが大切なのだ。


その日は結局辺りを見て回ってから都市に帰った。兎のいそうな草原や、何が出るかわかならない森など、害獣のいそうなエリアが多くあった。このあたりは人気がないって話だったから、てっきり害獣が少ないのかと思っていたが嬉しい誤算だ。これは獲物には困りそうにない。

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