第7話 「昔の人のお宝って例えばどんなのあるかな」「ここ基地ですし敵の基地や作戦情報ですね」「……いらない」
「おお!」
「……ああ、そういうことですか」
地下2階に降りてきたアタシ達が見たのは上とはまるで違う光景だった。
色々な部屋があった地下一階とは異なり、ナルモ基地地下2階は一面開けたフロアで、ケーブルや金属出できた機械がそこら中にある。地下1階と違って生活感は全く無い。なぜか上で見かけたようなロボットも見当たらない。
「デウス、ここすごいな!何だあれ?」
中央にひときわ大きな機械がある。操作用のパネルと思しきパーツと横長の金属製の箱が結合している。部屋はそれを中心に造られているから、大事なもののように見えるが用途がわからない。少なくとも都市でもアウターでもこんなものを見たことはない。
この基地はここが本命だったのか。これは金になるんじゃないのか?
「これなんだろな?ベットか?」
いろいろ見回したところで、アタシは部屋のど真ん中にあるいかにもなお宝を指差す。
金属製の箱は都市の病院にあるカプセルベットに似てなくもない。
「……ヨコクマ式タンパク質編集デバイス、製品名ではなく機能を持っているものの総称ですけどね。ナルモの基地にあるということは多分ナルモ社製です。細かく機能を羅列するとキリが無いので省略しますが主な用途はゲノム編集から、タンパク質合成、ウイルスの導入などなど多岐にわたります」
今日のこいつはやたらと言い回しが難しい。
「……つまり、何をする機械だ?」
「生き物を改造して、目的の形質……早く育つ植物とか沢山肉が取れる家畜、優秀な人間なんかを作る装置です」
「すげーじゃん!」
まさにお宝って感じのものが見つかった。生き物を改造する機械かよ!旧世界の技術はとんでもないな。
夢のような装置だ。これこれ、こういうのを待ってたんだよ。
興奮するアタシに対してデウスは白けた感じの表情だ。こいつが変わってるのは重々承知だが、白けた顔しているのは珍しい。もう少しこう喜んでもいいんじゃないか?生き物を改造する機械ってことはロボット的には役に立たないのか?
「お宝だよな?人間を改造できるんだろ?これ使えば頭良くなったりする?」
「これはそこまで夢のあるものでは有りません。当時はまあまあ使い出もありましたが、今は時代遅れの機械ですね」
「そんなこと無いだろ?さっき早く育つ植物とか色々言ってたじゃん。いくらでも使い道あるだろ?」
今の動植物をさらに効率的に作れるできるなら都市でも十分役に立つ。栄養バーが更に進化するかもしれない。
「あの機械は遺伝子、生き物の設計図ですね、それを変化させることで生き物を変化させるんですが、あくまでその生き物の範疇を超えません。人参は兎になりませんし、ヒトが空を飛べるようにもなりません。そして、機械が完成したのが戦時中なもので当時の人間たちは生き物を片っ端から人間自身も含めて戦争のために改造しまくったんです。大抵の試みは、数百万年の自然選択の正しさを再認識するだけの作業でしたが、トライアンドエラーの成果は溜まっていき、ある程度までなら無理なく編集可能になりました。これ以上改造すると生物としては終わる、という編集可能な限界が理論限界です。今地上にいる生物はほとんどこの限界まで改造されています」
なげえ。デウス的に教えたいポイントだったらしい。
「昔に散々使われたから今はあんま意味ないってこと?アタシ改造された覚えないけど」
「変化させた遺伝子は継代しますので、マキナさんのご先祖様が改造済みなら結果は一緒です」
つまりこの機械でアタシの頭を良くすることは出来ないわけか。というか、改造済みでこれなの?個人差大きくない?がっかりだよ!
「んじゃ新しいなんかすごい動物とか植物とか作れない?」
「発見されている珍しい形質の再現程度ならできるとおもいますが、今から新しい編集パターンを見つけるには基礎研究からやり直す必要がありますが望み薄いでしょう。当時とはマンパワーが違います。」
一から勉強とかが必要なわけね。んー、どうすっかな。都市でもアウターでもこういうの好きな奴はいそうだけど、あんまり金にはならなさそうだ。
「んじゃあこっちは?」
「付加価値金属錬精機、えー、平たく言うとナノマシン作る機械です」
「ナノマシン?」
また新しい言葉が出てきた。というかこっちはやたらと説明が短い。
「非常に小さい機械と思ってください。さっきのスライムなんかもこれが材料になっています。……都市ではナノマシンはメジャーじゃないんですか?」
さっき聞いていたらしい。ほうほう、なるほど。アレがこれで作られるのか。すごくね?
「大発見かな?」
「都市にはもっと高性能なものがありますね。廃棄物集積場に届くゴミを見ても間違いないです」
「まじか。全然知らなかった」
「コストを考えると民間には供出されていないのかもしれませんね。これでも十分つくれますので、さっきのヨコクマよりは当たりだと思います」
なるほど。どっちもなにやら難しい機械であることは分かった。まあ、都市に持っていけば金にはなるだろ。
「これどうやって持って帰るかな。バラせるかな」
「……」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます