機械仕掛けの宙を廻りて
ドフォー
プロローグ
第███話【永劫月下の星の元】
「久方ぶりか、
俺に背面を向け、遠くから語り掛けてくる"彼女"の姿は、畏ろしく、そして美しく見えた。
分解者の立ち去った大地に刺さる、霜と灰に覆われた枯れ草を黙って掻き分ける。
崩落した鉄筋コンクリートの森林を抜ける、生気を感じぬ風を黙って押し退ける。
"彼女"は続けて俺に語り掛ける。
「あの衛星の名はセアティス。主星であるこの星と潮汐ロックの関係にある。三日月形の"海"が特徴だ」
"彼女"は、何かが融解し混じった液体に住む生物に餌をやっているようだ。
"彼女"は、枯れ草を摘んでは何者かの肉片に変化させ、与えているようだ。
"彼女"は続けて俺に語り掛ける。
「君の背後にある恒星はアルデバラン。時期に沈み、長い夜が訪れるだろう」
"彼女"は立ち上がり、俺を見つめる。
俺は歩みを止め、"彼女"を見つめる。
「……良くぞここまで辿り着いたな。さて、終止符を打とうか。████」
俺の背後で沈み行く恒星が、俺を冷たく見つめている。
"彼女"の背後で昇る衛星が、俺を生温く嘲笑っている。
あぁ、今宵も空が澄んでいる。
"あの時"と同じだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます