第34話
そして僕は夢を見た。
また悪夢かと思い身構えたが、血の匂いがしなかった。土の匂い。青草の匂い。
僕はシロツメクサが生い茂る畦道の上に倒れ、突き抜けるような青空を見上げていた。
立ち上がろうとしたが、右脚に激痛が走る。学ランの裾をまくって見ると、脛のところが青く腫れあがっている。
なんだろう? 折れているのか?
どうして…?
「ねえ、大丈夫」
ガサ…と草を踏みしめる音がして、誰かが僕の顔を覗き込んだ。
それは女で、牧野に似た顔をしていた。
病院に勤めているのか、白衣を身に纏い、脇には黒い鞄を抱えていた。
「怪我、しているんじゃない?」
柔らかい風が、その女の黒髪を揺らす。
誰だっけ、この人。
でも、なぜだか、とっても懐かしい気がした。
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