4-5「多いなる力」

 「佑心君、大丈夫⁉」


 「ああ」



 佑心は口元を拭いながら立ち上がった。



 「なんだ?お前もか?きっひっひ、この調子だと同類は結構いるってことだな!探し続けてきた甲斐があったってもんだ!」



 いかにもヴィランのように、天を仰ぐ男。貧相な体躯が上背を強調していた。興奮に目を光らせる男だったが、バンという音で崩れた。右手で左肩口を押さえ、膝をつき唸り始めた。佑心は何が起こったのか分からなかったが、すぐによく知った声がした。



 「はあ、はあ、はあ……二人とも、大丈夫⁉」



 男の後方に銃を構えて佇む心が見えた。佑心が高々とグーサインを出すと心も頬を緩めた。しかし、男は地に這いながら佑心に手を伸ばしていた。



 「この……!」



 伸ばされた掌から光がじわじわと貯められていく。佑心は彼に気づき、大声を上げた。



 「川副避けろ!」


 「え……」



 川副は反応が遅れた。今にもパージ能力が発されようかという時、青い光が細長く宙に走り男の頭蓋に命中した。一瞬で白目をむいて気絶しぱったり力をなくした。



 「あんたたち、油断してないの!」



 青い光が飛んできた方向から、原が優雅に下りてきた。



 「まさか死んだんですか?」


 「いいえ。気絶しただけよ」



 原はゴミを見る目で倒れる犯人を見下して言った。



 「そんなピンポイントでできるんだ……」


 「特に青のパージ能力はバランスが良くて、コントロールしやすいって言われてるからね」



 川副は誇らしげに肩を上げた。



 「それはそうと、一条はどこよ!あいつに聞いてここに助けにきたのに……」



 原が腰に手を当てて文句を垂れた時、心の携帯が震えた。



 「一条さんからです!はい、もしもし」



 心はそういってみんなの近くに行き、スピーカーに切り替えた。スマホから小さな息遣いが聞こえてきた。



 「今、殺人犯のゴーストを追ってるの!」


 「え⁉」



 電話の向こうで、一条は電話片手にゴーストを追っていた。



 「佑心たちが犯人を刺激したから、そのゴーストも活発になって気配が分かりやすくなったんだと思う!それに活発化して憑依体化しやすくなってるだろうから、早くパージしないと!」



 屋上にいる佑心たちは一条の緊迫したムードとは裏腹に落ち着いていた。



 「それならきっともうそんなに急がなくても大丈夫よ。連続殺人犯はこっちで捕まえたか……」



 原が男が倒れているあたりを見て、目を見開いた。



 「犯人が、消えた⁉」


 「いつの間に!」



 心、佑心も続けて驚嘆の声を上げた。そこには誰もいなかった。

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