4-4「大いなる力」
佑心が男を追いかけていく前、心は飛ばされた一条に駆け寄っていた。
「一条さんっ!」
一条は向かいの家のブロック塀にめり込み、ブロック塀はボロボロと崩れ落ちていた。
「大丈夫ですか、一条さん!」
心がそばに行く前に、一条は自力で立ち上がった。
「っ大丈夫……遅れたけど、受け身取れたから。舜は先に佑心のところに!」
大丈夫とはいうものの、顔には流れる血が見える。しかし、心には上司でも友人でもある一条を信じる以外の選択肢はなかった。
心は佑心と男の姿を空に探していた。パージ能力のない心は他のみんなのように空を駆け回ることはできない。息がきれてきた時、上方でドーンと轟音が鳴りその辺りで土埃が舞ったのが見えた。
「あそこか!」
心は速度を上げた。
*―*―*―*
車で待っている原と川副は、なかなか戻らない三人を気にし始めていた。原はスマホで時計を見てイラついていた。
「もう、三人は何やってるのよ……」
「さすがに遅いですね……」
ふと外を見ると、川副はミラーに一条の姿を捉えた。何やら全力でこちらに戻ってきていた。一条は車のドアに手をかけ息を整えた。
「い、一条!どうしたの⁉」
原は一条の服が汚れていたり、出血があったりすることに気づき、川副もはっと口に手を当てる。
「はあ、はあ、はあ……」
一条は頭痛を堪えながら額の汗を拭った。二人はそうしてやっと事情を知らされたのだった。
*―*―*―*
男はぐったりする佑心の元に悠然と歩いてきた。佑心はぐったりと頭を垂れている。
「やっと会えた、同類に……でも君の力とは色が違うようだな……」
「お前、同じ力を持つ人間を見つけて、何がしたいんだ?」
佑心は歯を食いしばって聞いたが、男は不思議そうに顔を傾けた。
「俺や君のようなやつを集めて、社会を正す……この力のせいで、霊感の強い俺はこの社会に排除された……否定されてきたが、それも終わりだ……君はどうだ?」
「あ?」
佑心は片膝を立てて、なんとか立ち上がろうと試みたが足に力が入らない。
「君はその力で、終わらせたいことはないのか?忌々しい力も、使いようでは世の理不尽を壊せる……そうは思わんか?」
(理不尽な世の中、そうだ……パージ能力は俺の人生を狂わせた。そして確かに使いようによっては理不尽を壊せる。だから……)
男の言いたいことは痛いほどよく分かった。しかし出した結論は対極にあった。
「俺は俺の家族や古田みたいな理不尽をぶっ壊そうとしてんだよ!お前とは違う意味でな!」
佑心が力強い笑顔を見せると、男は怒りに顔を歪めた。
犯人は灰色に燃え上がった右腕を佑心の頭上に振り下ろした。膝をついたまま、咄嗟に両腕をクロスするが、とても受けきれるようには思えなかった。衝撃に備えて固く目を閉じたが、しかし衝撃は来ず目前で青い光が炸裂したのだった。佑心は瞼の裏に届くほどの光に顔を上げると、目の前には川副がいた。男は数メートル先に飛ばされ、腕を庇いつつ立っていた。
「川副!」
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