4-3「大いなる力」

 急いで追いついた一条と心も、同じく怪しい男に釘付けになった。こちらに背を向けていた男はゆっくりと顔だけ動かした。



 「あなた、一体な……」



 一条が言いかけると、男は手を伸ばした。そして一気に灰色の光が走った。灰色のパージ能力の持ち主だと分かった時には一条は既に道の反対側に吹っ飛んでいた。



 「一条!」



 今度は佑心にパージ能力が飛んできた。すぐに能力で強化した腕で防いだ。心はウエストポーチに手を伸ばし、拳銃を構えた。すぐに一発放たれたが、男は高く跳躍してビルの屋上まで飛翔した。

 


 「待て!」

 


 佑心もすぐに追いかけようと、ふらつきながらも屋上まで飛びあがった。訓練を受けたとはいえ、実践経験は浅い。屋上に無事ついただけでも、佑心にはチャレンジだった。コートをはためかせて男は不気味に笑った。



 「そうか、君もそうなのか……」


 「は?」


 「その力だよ」


 (パージ能力のことか?)


 「ずっと探し求めてきた、同じ力を持つ同類を……それなのに、どいつもこいつもすぐに死にやがって……クソ!」



すぐに結びついた。駄々をこねるみたいに悪態をつく男はまさに探していた人物だった。



 「や、やっぱり、お前が連続殺人犯!」



 男はコートのポケットに手を突っ込んだ。



 「まあそう言うやつもいるか……同じ能力が使えるやつを探し回っていたからな……この能力をすこーし浴びせるだけで大概は死んじまうんだ……だからその後で包丁で刺して普通の殺人に見せかけるしかなかったが……」



 男はさも当たり前のことかのようにつらつらと話を続けた。



 (死因は刺し傷じゃなく、パージ能力だったのか!じゃあ、あの壁の痕はこいつがパージ能力を使った痕!)



 犯行現場で一条が見つけた壁の黒い痕はパージ能力の痕。佑心は一心不乱に男に向かって走り出した。パージ能力で強化した拳で殴りかかるが、男は余裕の笑みを浮かべて腕でそれを受ける。二か月前には考えられなかった佑心の体術だが、男にダメージを与えることはなかった。佑心の蹴りが届くその前に、視界が灰色に呑まれて屋上の反対側まで吹っ飛んだ。

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