3-5「青の派閥」

 五人は合同捜査の手はじめとして、世田谷区の住宅街に赴いていた。



 「情報局の情報だと、ここ世田谷区にゴーストがいるって話よ」



 原がスマホの地図を片手に、辺りを見回した。



 「でも世田谷区って言ったって、かなり広いし……」



 心がそう言うと、一条がある提案をした。



 「じゃあ、二組に分かれて捜索しましょう。奏海さんと沙蘭のペア、私は佑心と舜と一緒に」



 原が顔を引きつらせた。



 「私だって今、分かれて探そうって言おうとしてたし……」


 「奏海さん、そんな張り合わなくても……」



 川副が隣で諭したが、原の神経に触れただけだった。



 「はあ!私が?一条と?張り合ってる?あっはっは!」



 そして急に真顔になると、



 「さ、早く行くわよ」



とくるりと回れ右して三人から離れていった。二人の後ろ姿を見届けて、一条たちも反対側に向かった。



 「私たちも行こ。まずは犯行現場付近をあたってみましょう」



 一条が資料を見ながら先導する。



 「なあ、原さんと一条って因縁でもあるのか?さっきすごい睨まれてたけど?」


 「さあ、歴としては同期だからじゃない?」


 「え、同期って、一条……」


 「ええ、私、十三からPGOにいるから」



 なんでもないように言う一条だったが、佑心には強いショックをもたらした。急に今までと違うように見える一条の背姿が頼もしかったが、心のせいで崩れ去った。



 「……おつぼね」


 「おつぼね言うなー!」



 心と一条の微笑ましいやり取りを笑って見ていた佑心だが、突然背筋に悪寒が走った。周囲を警戒するが、嫌な雰囲気の正体は見えてこない。



 「佑心?」



 佑心は一条を無視して、誘われるように細い路地に侵入した。



 「ちょっと!」



 一条が呼び止めるも、佑心は構わず足を進めた。



 「こっちだ」


 「何が?」


 「ゴーストだよ!」



 尋ねた一条に、佑心は半ばイラつきながら答えた。



 「え?」



 心と一条が顔を見合わせた。



 「感じるんだよ!こっちにいるって……」



 遠くを見つめるような佑心に、二人は困惑気味だったが、佑心はだっと走り出しいくつか角を曲がった。ただ気配を追い求めて走っていく。すると突然大通りに出た。視界が開けると、もう気配もなくなっていた。佑心は周囲に目を凝らしたが、人人人で探していたものは見当たらなかった。そこへ「はあはあ」と息を切らしながら、心と一条が合流した。



 「佑心!急に走らないでよ!」


(消えた……?)


 「あんた、大丈夫?」


「あ、ああ。ごめん」



 一条たちから見て、どう見ても佑心は「大丈夫」ではなかった。心と一条はまた顔を見合わせた。

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