3-3「青の派閥」

 佑心はPGO寮の自室に段ボールを運び込んでいた。新しい自分の部屋に入ろうというところで、向かい側の部屋から心が出てきた。パジャマ姿で眠そうに目をこすっている。



 「あ、おはよう。もう荷物運び終わった?」


 「おはよう。これで最後だよ」



 眠そうな心を佑心がくすくす笑った。すぐにPGOの制服姿の一条が心の右隣の部屋から出てきた。



 「二人とも急ぎなよ。松本さんが今日話あるって言ってたから」


 「うん、分かった」



 あくびしながら答える心。一条はそのまま廊下を進んで、PGO本部に向かっていった。佑心が再び段ボールを持って部屋に行こうとすると、扉に引っかかって中の写真がはらりと廊下に落ちていった。佑心は気づかずにそのまま部屋のベッドに段ボールを置いた。



 「ん?」



 心が裏返しになったその写真を拾い上げて返した。母親らしき人物と少年少女の三人が幸せそうに笑っている。佑心が施設の部屋にも飾っていた写真だった。



 「これって……」


 「母さんと姉貴だよ」



 佑心の声がして心は驚いて顔を上げた。写真の中で楽しそうに笑う三人を見て、心も優しい笑みを浮かべた。



 「二人のこと、ここで分かるといいね」


 「ああ」



 心は写真を佑心に手渡した。


*―*―*―*


 松本のデスク前に一条、心、佑心が並んで立っていたが、一条は松本の方に乗り出してしかめ面になった。



 「合同任務⁉」


 「ああ、補佐室からの要求だそうだ。今都内で起きている連続殺人についてだ」



 松本は手元の資料を見ながら言った。



 「確かに、犯人が捕まる兆しがありませんね。ネットじゃプロの殺し屋なんじゃないか、なんて言われてますし」


 「あー、それ俺も見た」



 心は縁起でもない噂を持ち出し、佑心は苦笑した。



 「ま、無理もないな、警視庁はまだ容疑者の一人も見つけられていないんだから。それをまあ、PGO的観点から捜査してくれってこった」


 「それで、合同って、誰と組むんですか?」



 一条がまだしかめ面でそう聞いた。

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