10-2「ブルークリスマス」

 佑心はデスクの引き出しを漁っていた。デスクの上に置いてあるファイルも一つ一つ丁寧に見ていく。



 「しゅーん、俺のノート知らないかー?茶色い小さめのやつなんだけど……」


 「ん?さあ。いつ失くしたの?」



 心は後ろの棚にファイルを戻していた。



 「それが分からないんだよなー。最近開いてなかったから……」



 佑心は困って頭を掻いた。



 「特殊執行部に回収されたとか?」


 「いや、それはない。押収物リストにはなかったから」


 「そんなに大事なノートなの?」



 佑心はノートを探す手を止めた。



 「ああ。あれには写真が……」


*─*─*─*─*


 佑心の探すノートは薄暗い部屋に横たわっていた。宗崎京香はそれを前にして肘をついていた。



 「ゴーストにより家族を失った少年、か…」



 ノートからは写真が少しはみ出していた。



 「かわいいじゃないか…」



 黒マスクの男、宗崎泰河は京香のデスクの前に立っていた。



 「先月のスピード解決も、実はそいつのおかげだとか…原と川副の会話によると、新田はゴーストの気配に敏感だそうです」


 「ふーん…それはますます、こちら側であることを祈ろうか…」

 京香が意味深に呟いた。


*─*─*─*─*


 結局ノートは見つからないまま十二月に突入した。PGO本部の廊下には「パージャー冬期研修会C級の部」と大々的に立札が立っていた。室内には多くのパージャーが長机にずらりと並んで前で話す人の話を聞いていた。一条は後ろの方に座し、斜め前にいる舛中を気にしていた



 (確か奏海さんの上司……C級だったんだ…)


 「一条パージャー」


 「はい?」



 前で講義する職員から声を掛けられ、一条は真面目な顔で返事した。



 「報告、お願いできますか?」


 「あ、はい!」



 一条は背筋を伸ばして立ち上がった。

 別室では「パージャー冬期研修会Ⅾ級の部」という立札があった。室内はまだまだざわざわして、立っている人も多い。佑心、心、日根野が隣同士の席を見つけた。その後列に泰河と幼いロングヘアーの少女が後列にいた。佑心は斜め前にいる原、川副を見つけたが、川副は明らかに肩を落とし瞳に暗い影を落としていた。



 「どうしたの?」



 心は微動だにしない佑心に声をかけた。



 「川副だよ。なんか元気ないよなーって……」


 「まあ、立ち入り捜査とか色々あって、ここ一ヶ月大変だったから」


 「ああ……」



 佑心はずっと川副を見ながら、納得していないがそう答えた。心は構わず話を続けた。



 「そういや、あの後結局ノート見つかった?」


 「いいや、全然。任務先にでも間違えて持ってたったかー?」



 佑心はやっと川副から目を話し、天を仰いだ。その会話を聞いていた泰河は厳しい表情をつくった。

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