6-2「胸懐」

しかし、ここで佑心は目を閉じたまま声を張り上げた。



 「舜!今だー!」



 舜は光をもろともせず、物陰から飛び出して拳銃を構えた。

大きな破裂音が空間を裂いた。



 「なっ!どこから⁉」



 男の足元に命中した弾は男から自由を奪った。あたりを覆っていた光が晴れると、全員祈るように目を開けた。佑心ももがき苦しむ男を確認すると、安心してその場にへたりと座り込んだ。



 「はあ、終わった……」


 「眠ってろって……こいつはゾレトで収監決定ね……」



 原が撃たれた痛みに喚き続ける男の意識を刈り取った。心は男に駆け寄って肩と足を止血の処理を始めた。



 「っ!一条は⁉」



 佑心は安どと共に思い出して声を荒げた。男のそばにいた原が退屈そうに振り向いた。



 「大丈夫。気失ってたけど、今頃は事務局の人に回収されてるだろうから」

 


 佑心は再び肩の力を抜いた。



 「はあ~……」



 佑心と川副は力尽きてその場で仰向けに寝転がった。眼前には、星々が燦然と輝いていた。



 「……きれいだ」


 「きれい……」



 佑心と川副の言葉が重なり、二人は顔を見合わせた。佑心は声を上げて笑い、川副は顔を赤らめた。その後ろで原は二人を見守っていたが、ある気づきを得て徐々に表情を固くした。



 (うそ、まさか、この子……)


*─*─*─*


 車内から、川副、原、佑心、心が続々と降りた。いつもの守霊教の大聖堂前だった。すっかり深夜だが、ビルの明かりは明々としていた。それぞれ応急手当は完了しているとはいえ、疲労が見て取れた。



 「でも、よく分かったね。交戦中に僕の意識が戻ってるって。銃も渡してくれたし」



 佑心は戦闘中に心の拳銃を蹴っていたのだ。



 「ん?ああ、たまたまな」


 「あんたたち、どうやってあいつと戦ったの?透明人間になれるなんて、厄介なやつだったのに」


 「全部、佑心君の作戦のおかげなんです」



 川副はそう言って佑心を横目に見た。



 「作戦?どんなの?」


 「俺はあの男の気配が何となく分かったので、川副と役割を分けたんです。心はパージ能力が見えない、だから犯人の閃光弾に太刀打ちできるのは舜だけだと思って……」



 川副が急に何かに納得して膝を打った。



 「じゃあ、あの『待機!』って言うのは舜君に向けてだったんだ……」


 「ああ!」



 佑心は爽やかに微笑んだ。川副と並んで原は腕を頭の後ろで組んで、すましていた。



 「でもねー、心だってパージ能力が見えたかもしれないじゃない?普段は見えなくても、魂を強く感じた時は一般人でも見えることがあるって言うし」


 「それは正直賭けでしたけど……」



 佑心は恥ずかしそうに頭をかいた。



 「賭けじゃないよ。僕は多分皆の能力は一生見えないから。昔死にかけたときでさえ、何にも分かんなかったし」


 「ふーん、新田、あんたやるじゃん」


 「あ、ありがとうございます……」


 「早く保健局に行ってちゃんと手当してもらいましょ」



 そっけないような言い方だが、隣の川副は嬉しそうに笑っていた。心と佑心はいやに上機嫌な原に若干戸惑いを見せた。

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