　原はビルの屋上から身を乗り出して、一条を探した。

　「もー、一体どこにいるのよ！一条は電話でないし！」

　原は携帯を見ながら地団駄を踏んだ。その時、妙な気配を感じて目を見開いた。すぐに地上に降りてそこから暗い路地をかけていく。いくつめかの角を曲がろうとしたとき、反対側から走って来た誰かと真正面からぶつかった。

　「ぎゃっ！」

　「イッテテ……」

　原が尻もちをついて顔を上げると、一条が頭に手を当てて地面に伏していた。

　「い、一条！やっと見つけた！ねえ、あんたもゴーストの気配を追ってきたんでしょ！」

　「はい。奏海さんが来てくれて良かったです！早く行きましょう！」

　一条は立ち上がって原に手を差し伸べた。原は不本意ながら、その手を取り威勢よく言った。

　「ええ。あんたこそ遅れんじゃないわよ！」

　あるビルの屋上から見えるのは都内の学校のグラウンドに漂うゴースト。青白いゴーストは頻繁に形を変え、燃え盛っていた。

　「あれね……」

　原が屋上から飛び降りようとしたが、一条が手で制した。

　「待って！」

　「ん？」

　「校舎の電気、あそこ、点いてます」

　一条が指差す校舎の一階は確かに電気が明々と点いていた。

　「えー、こんな時間まで仕事してる訳？」

　「いや、そこじゃなくて……」

　一条は原にツッコみつつ、思考を巡らせた。

　「ゴーストを職員室に近づけないようにしないと……」

　「そうね。早く片付けて沙蘭たちのところに合流したいしっ！」

　原は今度こそ飛び降り、一条もそれに続いた。

原と一条は校舎を背にしてグラウンドに着地した。

　「様子見と行くか……」

　目の前には何千回と見てきたゴーストが宙を照らしていた。原が軽くパージ能力を放つと、漂うゴーストから反撃が飛んできた。原はなんとか攻撃を避け、一条も後退するゴーストを反対側から足止めした。しかしゴーストはさらに巨大化し左右に逃げ惑うようにうごめいた。今度は原が青い大きな光の塊を作り出した。それは綺麗な球体に変化し、みるみるゴーストを飲み込んだ。一瞬ゴーストは球の中で大人しくなったが、また巨大化して球を中から割ってしまった。球が風船のように爆発して割れた勢いと風に押されて、原は手で顔を覆った。

　「こんなに攻撃的なゴースト、初めて見た！」

　「それほどゴーストの主であるあの男が、危険ってことですよね……パージャーのゴーストは特に強いと言いますし……」

　一度ゴーストから距離を取った二人は強敵を冷静に観察した。一度離れてしまえば、ゴーストが攻撃を飛ばすことはなくなった。

　「だからこそ、パージ能力で殺して、ゴーストが生まれないようにしないといけないんでしょ？とにかく、ゴーストをどこかに閉じ込めて、一気に一条の光束量でパージするしかないわ！」

　一条は一抹の不安を覚えた。