隣の芝生には華がある

鐸木

隣の芝生には華がある

十年越しの私の故郷

見る影もなく成長してる

未だに幼い私の影法師

汚れた卒業証書に説法される

隣の芝生には櫻の吹雪


二十年後の私の故郷

取り壊された駄菓子屋さん

取り残される私の影法師

新品の卒アルには埃が積もってる

隣の芝生には紫陽花の群れ


三十年後の私の故郷

立ち込めるビルディング

薄くなった影法師

意味の失った玩具箱に叱責される

隣の芝生には燦爛とした紅葉


四十年後の私の故郷

くぐもった灰色の空気

入る余地のない影法師

大人びた公園に嘲笑されてる

隣の芝生には浮ついた樅木


何年経っても変わらない私の芝生

青々と雑草が生い茂るだけ

華がないと揶揄う隣の芝生

枯れかけた雑草の中には

四葉のクローバー


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

隣の芝生には華がある 鐸木 @mimizukukawaii

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ