3. 理性
「はぁ、はぁ……お兄ちゃんっ……!」
その指を動かせば動かすほど、私のお兄ちゃんに対する気持ちは強まっていく。
お兄ちゃんを想えば想うほど、それは興奮と快楽へ成り変わる。それほど私のお兄ちゃんに対する想いは誰よりも強く、そして本気だった。
「好き、好きっ! 大好き……!」
頭の中がお兄ちゃんで満たされる。お兄ちゃんのことしか考えられない。今すぐにでも、お兄ちゃんと繋がりたい。ひとつになりたい。
「お兄ちゃん……お兄ちゃんっ!」
でもそれは本来、妹が兄に対して抱いてはならない禁断の感情。
頭では分かっていた。でもその理性を無理矢理取り払い、私はお兄ちゃんと禁忌の関係へ踏み込んでしまった。お兄ちゃんの弱さに付け込んで……。
時間が経過するにつれ、これは良くないことなんだ、と罪悪感が増す一方だった。
「あっ、やばぃっ……!」
だからこうして度々、一人で性的欲求を満たしている。自室のベッドの上で、布団を抱きしめて、お兄ちゃんを想いながら。
お兄ちゃんに対して大きすぎるこの感情を抑えるために。
「あっ、はぁ……いく、イクっ……!」
小さな喘ぎ声と共に私はやがて絶頂に達した。中を刺激していた指はキューと圧縮され、身体がビクビクと痙攣を起こしていた。何も考えられない。ただ快感に支配され、沈められるだけ。
「はぁ……はぁ……」
乱れた息を整えながらも、未だに絶頂を続けている。その快感は、お兄ちゃんを思い浮かべると更に強まっていく。
「すぅ……はぁぁ……」
こうやって一人で性的欲求を満たしているのは、お兄ちゃんに対する下心を抑え込むためでもあった。
私がお兄ちゃんと身体を重ねれば重ねるほど、お兄ちゃんに対する気持ちは大きくなる。そしてお兄ちゃんも更に依存が加速するだろう。
だから、少し控える必要があった。もっと言えば、距離を置く。
このままだとお兄ちゃんは一人で生きていけない。私の自分勝手な感情が先行して、お兄ちゃんの人生を狂わせるなんてこと、私はしたくない。
だからお兄ちゃんのためにも、仕方のないことだった。
でも本当は、そんなことしたくない。
「お兄ちゃん……」
だってお兄ちゃんは、ようやく私のことを頼ってくれたから。私のことを必要としてくれてるから。
このまま私に依存していてほしい。お兄ちゃんは一人で生きられなくてもいい。ただ私とずっと一緒にいてほしい。私しか見ないでほしい。
もっとお兄ちゃんといちゃいちゃしたい。キスもしたい。えっちなこともしたい。二人だけの時間を過ごしたい。
でも、出来なかった。
私の中に存在する微かな理性が、最後に邪魔をするんだ。
「ごめんなさい、お兄ちゃん」
私には、お兄ちゃんのことを救う義務がある。だからその理性に従わなければいけない。お兄ちゃんと距離を置くのは心苦しいけど、それでも。
私にとってお兄ちゃんは大好きで大切な――家族だから。
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