4. 歪んだ好意


「お兄ちゃん、直接していい?」

「……えっ? 直接って――んんっ……!?」


 お兄ちゃんの返答を聞く前に、私は手をお兄ちゃんの下着の中に入れていた。


 私も女の子だから、どこを攻めれば気持ちよくなれるのか理解してる。だから、躊躇することなく優しく撫で続ける。


「んっ……くぅぅ……!」


 今まで感じたことのない快楽に堕ちていくお兄ちゃんを見るのは、とても興奮した。

 こんなに気持ちよさそうな顔と声をして、私の背中に手を回している。もっとして欲しいって、私にはそう言っているように見えた。


「声出すの、我慢しなくていいんだよ……? もっと聞かせてよ、お兄ちゃんの可愛い声……」

「んあっ……! そこ、だめぇぇっ…………!」


 指に少量の力を加える。すると、お兄ちゃんの声も従ってよく聞こえてくるようになる。


 不意に、お兄ちゃんの顔を見る。


 快楽によってとても蕩けた顔だった。頬は赤く染まり、息遣いが荒くて、力が入らないのかお兄ちゃんの唾液が口から少し垂れていた。


「んっ、ちゅっ」

「んんっ!」


 お兄ちゃんの唾液を吸い取るように、これ以上零れないように、お兄ちゃん唇を私の唇で塞ぐ。私が舌を絡ませようとすると、お兄ちゃんは抵抗もなく、むしろ自分から絡みにいく。


 当然その間、私の指は動いたまま。

 しかしキスをしてから、お兄ちゃんの秘部の中が締まっている感覚がした。

 これは……。


「お兄ちゃん、イキそうなの……?」


 唇を離して、お兄ちゃんの顔を見ながら聞いた。


「わ、分かん、ないっ……んぁ……でもなんか、きちゃうっ……!」

「そっか。でも、まだダメだよ。我慢しなきゃ」

「そ、そんなことっ……言われてもぉ……!」

「ほら、我慢しようね。お兄ちゃん……」


 私は指の動きを緩め、優しく愛撫する。


「ひぃぅ……! あっ、はぁ……む、むりぃ……!」


 一旦お預けをされて、お兄ちゃんの顔がまた一段と蕩けていた。物欲しそうな……「はやくイかせてほしい」と言っているような眼差しを、私に向けていた。


 それはまるで小動物のようで、好きな人をいじめたくなるように、ついついいじめたくなってしまう可愛さだった。


「かわいい……。んっ、ちゅぅ」


 またお兄ちゃんの唇を塞ぐ。

 しかし絶頂の寸前だからなのか、全身に力があまり入っておらず、舌も絡ませようとはしなかった。


「んっ、ちゅ……ひゃぁ……!」


 お兄ちゃんは私と唇を重ねながら小さく喘ぎ出した。

 指の動きを早め、お兄ちゃんを快楽の底に堕とそうとする。


「ちゅぅ……んっ、はぁ……」

「んんっ……ぷはぁ……な、なんか……きちゃうっ……!」


 お兄ちゃんの腰がヒクヒクと動き始めた。もうそろそろだろうか。

 私は手を休めることなく動かし続ける。


「いいよ……、いっぱい感じて。私でたくさん気持ちよくなって……」

「あっ……も、もう、むりっ……い、くっ…………!」


 その瞬間お兄ちゃんは絶頂に達し、お兄ちゃんの身体がビクッと大きく反応した。それと同時に、秘部内がキューっと収縮し、その後も身体全体がビクビクと痙攣していた。


「ひゃっ……………んぁっ……なに、これぇ……!」

「気持ちいいでしょ……? これが、女の子の絶頂だよ……。んっ」


 お兄ちゃんが絶頂の最中なのにも関わらず、喘ぎ声が出ているその口を無理矢理にも私の口で塞ぐ。


 噂では、女の子の絶頂は男の子のより数倍気持ちいいのだとか。きっとお兄ちゃんは今、感じたことのない快楽に襲われているだろう。

 そのためなのか、キスをしていてもお兄ちゃんの口から抑えきれない声が漏れていた。


「ぷはぁ……ま、待って……! いま、イってるからぁ…………」


 未だにお兄ちゃんの秘部は収縮し、身体は微かに痙攣していて本当に気持ちよさそうだった。

 でも流石にこれ以上してしまえば、お兄ちゃんがあまりの快楽によって壊れてしまうかもしれない。


「かわいい」


 未だ絶頂を続けるお兄ちゃんをギューッと抱きしめる。


 お兄ちゃんの鼓動は速く、私の耳元にはお兄ちゃんの荒くなった息遣いがかかる。可愛い声で、適度に息が耳にかかるから、ついゾクゾクしてしまう。


「はぁ……はぁ……」


 やがて落ち着いてきたのか、体の痙攣も収まり息も整っていった。


「お兄ちゃん、大丈――」

「待って……今は、顔合わせたくない」


 起き上がろうとする私を、お兄ちゃんは力強く抱きしめたまま拘束した。……とは言っても、余韻のせいなのか力なんてあまり入っていなかったけど。


「少しやりすぎちゃったかな……ごめんなさい」

「そ、そんなことないよ。……とても良かった」


 吐息混じりの声で、恥ずかしそうに言った。


「ほんと? 良かったぁ……」


 お互い抱きしめたままで、顔を合わせていない。でも、今お兄ちゃんがどんな顔をしているのか、私には分かる。


「……どう? 少しは楽になれたかな……?」

「…………うん」


 ギュッと、お兄ちゃんは私の服を掴んだ。


「顔、見たい」

「…………ん」


 私はお兄ちゃんのことが好き。


「お兄ちゃんかわいい」


 家族としても、異性としても。

 兄妹という枠を逸脱してしまった気持ちを、お兄ちゃんに抱いていた。


「や、やめて……」

「えー? ほんとのことだよ?」


 だからこそ、お兄ちゃんの役に立ちたいと思ったし、お兄ちゃんにとっての一番になりたいと思った。


「お兄ちゃん。キス……しない?」


 兄妹で結婚は出来ない。

 昔からその法と概念によって縛られてきた。妹だから、お兄ちゃんを「好き」になってはいけないって、自分を抑えてきた。


「……うん、する」


 でもああやってお兄ちゃんに求められて、凄く嬉しかった。私はお兄ちゃんにとっての一番に――唯一無二の存在になれたんだなって実感できたから。


「んっ、はぁ……ちゅぅぅ」


 こうやって素直に唇を重ねてくれるお兄ちゃんがかわいい。愛おしい。もっと犯してやりたい。私だけのものにしたい。

 そういった歪んだ感情を持つ私は、きっとおかしいんだろう。そしてこの感情はきっと、お兄ちゃんにとって良くないもの。


「――大好きだよ、お兄ちゃん」


 でもお兄ちゃんのためなら、この感情を吐き出してもいいのだろうか。

 お兄ちゃんが私を、求め続けてくれるなら。

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