言葉




 いやただおまえ親が勝手に決めた婚約者に振られただけだろ現実を見ろよ。

 そう思っていた日埜恵ひのえは、さっさと捕まえて、牢屋で一生を過ごしてもらおうと警察に電話しようと思った時だった。

 信じ難い言葉が自分の耳に飛び込んできたのだ。


「は?」

「ぜんぶぜんぶぜんぶあいつの所為なのよ。私がペガサスを殺してしまったのも。ぜんぶぜんぶぜんぶ。あいつの所為。あいつが、私の人生を。ペガサスの人生を狂わせた。命を終わらせた。あいつの所為。ええ、ええ。ぜんぶ。あいつの所為。だからあいつは命を以て償わないといけないの。そして、私はあいつを殺した後に、母ペガサスが新しく生んだこどもと一緒に旅をするの。ふふ。今度は邪魔をされないわ。あいつみたいな輩に誑かされないように、母ペガサスもペガサスも私の目の届く、私が触れられる範囲内に居てもらうから。あ~楽しみ。ふふ」

「おまえ」

「だから早くあいつの居場所を教えてよ。私は早くあいつを殺して、母ペガサスの所に行かなくちゃいけないの。それに、お金もいっぱい稼がないといけないの。あいつの殺害を依頼したおかげで、散財しちゃったわ。もっと早くに思いつけばよかったのに。誰かの手を借りないで自分で殺せばいいって。そうしたらもっと安く済んだのに。そうよ。そうだったのよ。あいつを殺すのにこんなにお金をかけるなんて。ほんっとにばかね。ふふ。ふふふふふ」

「おまえ。もう」




 黙れ。











(2024.6.14)



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