第33話 再会
案内された部屋は女将の言う通り、とてもいい部屋だった。
ただでさえ初めて泊まるダンジョン宿ということでうちの女性陣のテンションは高かったのだが、部屋に入った瞬間それは最高潮に達した。
「凄いですよ、師匠!」
「さっきの地底湖が一望できるわね」
「綺麗」
大はしゃぎの三人。
……メルファは相変わらず感情があまり出ていないけど、窓の外の景色を食い入るように眺めている様子を見れば大体察しがつく。
さらにこの部屋の特徴として、大浴場ではなく室内にも温泉がある。
ミレインたちは早速入るようだが、さすがに俺も一緒にとはいかないので大浴場の方で堪能させてもらうとするか。
彼女たちにもそれを告げて、俺は部屋を出る。
確か、大浴場は一階にあると言っていたな。
俺たちの部屋は三階なので、階段をおりてロビーまでやってくると、
「あれ? デレクか?」
いきなり声をかけられた。
振り返ると、そこには懐かしい顔が。
「おぉ! アランか!」
「やっぱりデレクか! 久しぶりだなぁ! いつ以来だ?」
「ガニエザの港町で一緒に酒を飲んだのが最後だな。かれこれ六年くらい経つか」
「そんなにか!? いやぁ、時の流れは早いねぇ」
談笑している相手の男はアラン。
俺がまだアルゴたちと出会う前、ダンジョン探索に出る際の注意点などを教えてもらったベテラン冒険者だ。
別のダンジョンに向かうため、ガニエザという小さな国の港町でお別れ会と称した飲み会を開いて以降、一度も顔を合せられなかった。
互いに世界を国々を転々とする生活を送っていたから無理もないけど……まさかこんなところで会えるとは思わなかった。
「これから温泉か?」
「そのつもりだが、君は?」
「俺もそうなんだ。どうよ、一緒に」
「お供させてもらうよ」
懐かしい話に花を咲かせながら温泉に入るのもまた一興。
――が、ここで突然アランの顔が曇った。
「そういえば……救世主パーティーを抜けたらしいな」
申し訳なさそうに尋ねるアラン。
気持ちは分からないでもない。
ずっと気にかかっていたのだろう。
彼は空気の読める男だ。
どういう情報が出回っているのは分からないが、彼の様子を見る限り「デレクとミレインはアルゴの逆鱗に触れて追いだされた」とでもされているのだろう。
あながち的外れってわけじゃないのだが、いろいろと語弊があるな。
その辺の誤解も温泉につかりながらゆっくり解いていこうと思う。
「詳しい話は温泉でするよ。そんな暗い話でもないから安心してくれ」
「そ、それならいいんだが」
アランも安堵したようだな。
さて、どこから話そうか……
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