第34話 温泉雑談

 ようやく楽しみにしていた温泉へとやってくる。


「ほぉ、思ったより広いな」

「あっちには露天風呂もあるぞ」

「いいな。後で行ってみよう」


 再会したアランとともに天然温泉を満喫しつつ、先ほどの話の続きを始める。


「救世主パーティーを抜けたらしいが、本当の理由はなんだったんだ?」

「ミレインを追放するというんでね。だったら師匠の俺も抜けるようって思っただけだ」

「バカな!? ミレインを追放だって!?」


 アルゴたちのやり方に対し、アランは憤りを覚えていた。


「信じられん……あの子はいい剣士になるぜ、デレク」

「当然俺も同じ考えだ。実際、彼女の活躍があったからこそ救世主パーティーとして認められたようなものだったからな」


 俺やミレインは主力としていくつものダンジョン攻略に尽力してきた。

 時には命を落としかけるようなトラップとも遭遇したり、とにかく一筋縄ではいかない場所ばかりだったが……こうして思い返してみると、やはりあの時のアルゴの判断は理不尽というほかない。


 ただ、悪いことばかりではなく、ミレインにとってはむしろプラスに働くことの方が多かった。


「最近はミレインもよく笑うようになってな」

「あのミレインが? かなり不愛想だったがなぁ」


 救世主パーティーにいた頃は常に気を張っていたからか、表情も硬くなることが多かったしな。

 それに加えてリーダーのアルゴによる陰湿なつきまとい。

 耐えられなくなって拒絶をしたのがすべての始まりだったな。


 しかし、終わってみればやっぱりそっちの方がよかったんだと思う。


「俺は……あの子こそ次代を担う剣士として活躍をしてくれると確信していたが……それはただのエゴにすぎなかった。ミレインはそこまで強さや地位にこだわっていなかったんだ。現に今の彼女を見たらおまえも驚くぞ」

「そこまで変貌しているとはね。この宿にはいるのか?」

「ああ。今頃は部屋でくつろいでいるはずだ」


 以前ミレインも世話になったわけだし、声をかけておこうか。


 そんな話題が続いた後、


「そういえば、こいつをおまえに教えておかなくちゃいけなかったな」


 急にアランの声のトーンが真面目になる。


「どうした、改まって」

「おまえのことだから耳に入っているのかもしれないが……アルゴたちは救世主パーティーとしての資格を失ったらしいぞ」

「えっ!?」


 これは予想外だった。

 正確に難のある連中ではあるが、実力はきちんとついていたので普通にしていたら資格を失うなんてヘマはしないはず。


 一体何があったんだ?

 その後、アランが詳細について話をしてくれた。

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