第30話 その後のアルゴ
デレクとミレインを追うアルゴであったが、その行方は依然として掴めなかった。
ふたりの故郷であるダイザー地方へ向かったという情報を得たものの、そこから先どこへ向かったのかは不明だった。
そもそも、一口にダイザー地方と言っても範囲は広い。
村や町の数も多いので、ここのどこにデレクとミレインがいるかまでは絞れなかったのだ。
さらに、アルゴたちには救世主パーティーとして果たすべき役割がある。
だが、パーティーのことを第一に考えなくてはならないリーダーのアルゴは、自らが追放したミレインとその師匠であるデレクの行方を追い続け、まともに依頼をこなす気がなかった。
おかげでついに国からランク下げの通知――つまり、救世主パーティーから外すという旨の手紙が届く。
これが決定打となり、パーティーメンバーの八割が去っていった。
古参メンバーであり、アルゴの側近を務めるジェームスとカインも、この事態にうんざりしていた。
なぜこうなったのだろう。
地位も名誉も金も手に入れ、まさに人生の絶頂期だったはずなのに。
その日を過ごす宿代すら払うのに苦労し、路上で夜を明かす日も多くなってきた。
信じて残っていたメンバーも日に日に数を減らし、ついには自分たち以外に五人しかいない状況まで追い込まれた。
――しかし、当のアルゴはまだふたりを追い続けている。
ふたりがクエストをこなして金を手に入れようと提案するが、
「金ならおまえたちが俺の分も稼げ!」
と傲慢極まりない発言。
ここで、ふたりの我慢の糸もプッツリと切れた。
「今のアルゴにはとてもついていけねぇよ」
「だが、どうする? 今さら冒険者に戻ったって笑い者になるだけだぞ?」
かつて、救世主パーティーとなってからの彼らは傲慢な振る舞いを続けていた。アルゴがいる限り、何も心配する必要はないと高をくくって好き放題していたのだ。
だから、あの頃を知る者たちから「ざまぁみろ」や「ほら見たことか」とバカにされる可能性が高いと見ていた。
一度あの派手な日々を味わってしまったら、もう普通の感覚には戻れない。
それを薄々感じ始めていたのだ。
もはや地道に一から始めるということすらできなくなった彼らが向かうのは荒れ果てた貧民街。そこで死ぬまで後悔する日々が待っている。
一方、アルゴは最後まで食らいつく気でいた。
そんな彼に――ある転機が訪れる。
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