第27話 新たな弟子トーラ
思わぬ形で新しい弟子が誕生した。
格闘戦を得意とするトーラはなかなかクセの強い子――と、思ったが、そもそもうちの弟子たちはふたりとかなりクセが強いタイプなので今さら感があるな。
ともかく、彼女はより強くなりたいということで格闘戦を軸に教えていく。
その日の夜。
せっかくなので夕食もこちらの食堂で済ませていこうという流れになり、近くの食堂へと入っていく。
「好きな物を注文してくれ」
「ホントに!?」
途端に目を輝かせるトーラ。
彼女が頼んだのは特大ステーキだった。
「やっぱ力をつけるなら肉でしょ!」
「野菜もちゃんと食べなくちゃダメよ?」
「えぇ~? 野菜食べても力でないし……」
「何事もバランスが大事よ。野菜だってちゃんと栄養価はあるんだし。戦闘でもパワーやスピードだけじゃ勝てないでしょう?」
「い、言われてみれば……そうか。うん。食べてみる」
「その調子よ」
野菜嫌いらしいトーラをあっという間に言いくるめたミレイン。しかもトーラとの会話に集中している隙にメルファが苦手なブロッコリーを彼女の皿に入れようとしたが、それを見抜いて「メルファも一緒に食べましょうね」と笑顔を向けて阻止している。
もはやベテランお母さんの貫禄さえ漂ってくるな。
みんな楽しく食事をしつつ、俺は明日以降の予定についても触れておく。
「明日はダンジョンへ探索に出る。場所は前と同じでグリーン・バレーだ」
「あそこは初心者向けじゃないの? みんなどう考えても初心者ってわけじゃなさそうだし、もっと上のダンジョンに挑戦しても問題ないと思うけど?」
「何事も基礎基本を疎かにしてはいけないよ。確かに戦闘力だけを見たら十分上でもやれるだろうけど、ダンジョン探索というのはそれだけじゃないからね」
ただ強いだけではダンジョンを支配できない。
もちろん、強くあることは必要だ。
しかし、時には知識や経験の方が重要になってくる場面もある。
俺たちは圧倒的に経験値が足りない。
それを補うため、もうしばらくはグリーン・バレーのお世話になるだろう。
「さて、トーラ。明日は早朝からトレーニングを開始するが……いいか?」
「望むところよ! なんだったら今すぐここで初めてもらってもいいくらいよ!」
「はっはっはっ、いい気合だな」
「ですね。私も見習わないと」
「私はもうちょっと穏やかでいい……でも鍛錬は頑張る」
三人ともヤル気は十分みたいだな。
教える俺としても彼女たちの成長が楽しみだよ、本当に。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます