第26話 ミレインVS謎の少女

 急遽始まったミレインと謎の少女による戦い。

 剣術と拳という武器の違いはあるが、どちらも格闘戦を得意とするタイプ。おまけにパワーではなくスピードで相手をかく乱して戦うという戦法もよく似ていた。


「やあ!」

「はあ!」


 激しい攻防が繰り返されているうちに、囃し立てていた野次馬たちもいつの間にか本気の応援に変わっていた。


 そばで見ていると、ミレインが優勢か。

 あの子も筋はいいし、それなりに経験は積んでいるようだが……まだまだ詰めが甘い。


 ミレインもそれを完全に見切っていた。

 俺との戦闘の後で疲弊しているという点もあるが、それを抜きにしてもやはり実力は彼女の方が上か。


 それからさらに激闘は続き――


「はあ、はあ、はあ……もうダメだ」


 少女は力尽き、両手両足を大きく広げながら倒れた。

 かれこれ一時間近くはやり合っていたか?

 あの小柄な体のどこにそんなスタミナを隠し持っていたのか……末恐ろしいとはまさにこのことだな。


「ちくしょう……あたしがここまで手も足も出ないなんて……」


 素直に敗北を認め、悔しさをかみしめている少女。

 自分の弱さを認識できるというのも強くなるためには欠かせない要素だ。

 己の実力をわきまえずに強者へと挑み、取り返しのつかなくなった者たちを数えきれないほど知っている。彼女がそうならなくてよかったよ。


「あなたも年齢の割には強かったですよ」

「それじゃあ意味がないんだ……世界一強くならないと」


 世界一とはまた大きく出たな。

 しかし、どうも冗談半分で言っているようには聞こえない。

 彼女には彼女の「強くならなければいけない」事情があるのだろう。


「……なあ」


 地面に仰向けで倒れている少女が俺に声をかける。


「あんたの弟子になったらそっちの剣士の人みたいに強くなれる?」

「さっきも言ったが、君次第だ。ミレインは俺の鍛錬に耐え、あそこまで強くなった。君も耐えられたら、今よりもずっと強くなれる」

「ふーん……」


 青空を見つめていた少女は、話し終わるとすぐに立ち上がった。


「なら、弟子になる!」


 そして流れるように弟子入りを決めたのだ。


「あたしはトーラ」

「俺はデレクだ」


 握手を交わし、簡単に自己紹介をする。

 それから姉弟子となるミレインとメルファを紹介し、正式に仲間へと加わった。


 やれやれ、また一段と賑やかになるな。

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