第25話 勧誘

「はあ? 強くなりたいって……何? あんたに弟子入りすればもっと強くなれるっていうの?」

「君次第だがな。俺の特訓はなかなかハードだからついてこられないかもしれないが」

「なっ!?」


 ついてこられないかもしれない――この言葉が、彼女のプライドに火をつけた。


「面白いじゃん……って、もしかして裏にいるふたりがあんたの弟子?」


 少女の視線はすぐ後ろで待機していたミレインとメルファに向けられる。


「そうだ。ミレインは剣士でメルファは魔法使い。拳で戦う君は闘士か?」

「一応それを目指している――けど、まさかあんたひとりで全員教えているの?」

「まあな」


 剣術も魔法も格闘術もひと通りこなせる。

 特に格闘樹は得意な方なのでアドバイスも送りやすい。

 それを伝えると、


「ふーん……なら、どれくらい強いか確かめてやる。弟子になるかはそのあとで決めさせてもらおうじゃない」


 そう言うと、少女はミレインを指さす。


「剣士のあんたに決闘を申し込むよ」

「わ、私!?」

「相手をしてやってくれないか、ミレイン」

「それは構いませんが……」

「遠慮は無用! 本気でかかってこい!」


 話の流れから、ミレインと少女が戦うことに。

 とはいえ、これはあくまでも実力を測るための模擬試合のようなもの。そのため、ミレインは本来使っている剣ではなく、近くに剣士見習いから借りた木製の模造剣で戦うことに。


 そうこうしているうちギャラリーが集まってきた。

 何やら面白い催しをやっていると吹聴して回っている者がいるようだな。


 見世物にするのはどうかと思ったが、ふたりともすでに集中していて周囲の話が耳に入っていない。ミレインはいつものことだからいいとして、あの少女もなかなかの度胸だ。


「はあっ!」


 先制したのはやはり少女の方だった。

 何か根拠があって仕掛けるというよりも、あれは後先考えていない本能による動きだな。しかし、類稀な身体能力でその無計画さをカバーしている。もう少し頭を使って攻撃ができるようになると化けそうだ。


 一方、ミレインは初見ながら少女のスピードについていけていた。

 恐らく、さっきの俺との戦闘で目を慣らしていたのだろう。

 まさか本当に戦うことになるとは思っていなかったようだが、普段からしっかり備える癖ができていて偉い。あとで褒めてやろう。


 さて、この勝負はどちらに転ぶかな?

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