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友人は最寄駅まで迎えに来てくれた。髪を染めたことを「いいやん」だけで済ましてくれた。少し寂しような気もしたけど、美容院行ったその日に写真を送ったことを思い出した。友人はそれよりも話したいことがあったようで、会ったときからニコニコしていた。
人が何か面白かった話を始める前の、あの空気感が好きだ。笑いを押し殺して、でも殺し切れてなくて、今にも吹き出してしまいそうな顔で話し出すあの瞬間は、誰も傷つかないことが約束されているようで、やさしい瞬間だと思う。
駅から友達の家までの十五分で、会わなかった期間の埋め合わせは終わった。この埋め合わせは誰と会うときでも大事だと思う。会わなかった期間、その人が何を考えて、どのように生きていたのか、その一端を知る作業だ。久しぶりに会った人との楽しみの一つでもある。
友人とは密に連絡を取り合っていたので、お互いにそこまで大きな報告はなかった。
家に着いたら長旅の疲れが出てしまい、暫く友人宅でダラダラしていた。何かしていても、何もしていなくても、気の置けない人といると時間は平等に流れていく。
いつも楽しいから、いつも早い。大学のときも喫煙者でまったりしているときが幸せだった。穏やかであの瞬間だけはいろんな悩みが色を失っていった。
せっかく遠出してきたのに何もせずいるのも、という話になったのでカラオケに行った。本当はシーシャバーに行く予定をしていたのだが、夜ご飯は居酒屋に行く予定だったので、カラオケに変えた。
突然遊ぶ内容を変更しても問題ないのが、都会のいいところ、友達のいいところだ。
カラオケに行く前に、軽食を食べるため星乃珈琲店に入った。星乃珈琲店といえばパンケーキのイメージが強くて、ほかのメニューをまるで見ていなかったが、この日はホットドッグを食べた。値段以上の美味しさに驚いた。ファンになりそうだ。
喫茶店でもいろいろ話はした。でもなんだったかは忘れた。後になったら、どうでもよかったよなって思う時間こそ大事にしたい。
カラオケは久しぶりだったからうまく声が出なかったけど、友人となら好きな曲を好きなふうに歌えるから楽しかった。
カラオケのいいところは相手の好きな歌を知れることだ。好みが同じだったら話が広がるし、違ったら新しい歌を発掘できる。
そうしてハマった曲は何曲もあるし、これからも増えていくだろう。
夜は餃子が美味しい居酒屋に行った。餃子と水餃子と小籠包と焼売を食べた。皮に包まれた肉が好きなのかもしれない。
酒は飲めないが、居酒屋の雰囲気は好きだ。ガヤガヤとしていて、みんな楽しそうで、あの空間で起きたことは大体のことを笑って終わらせられる気がする。
大学のときは金欠のくせによく飲みに行っていた。深夜まで飲んだときのあの楽しさは特別だと思う。
友人の家に帰宅してから、友人の弟と電話をした。こんな自分と会いたいと言ってくれるとてもいい子だ。今度一緒にライブに行く約束もしたので、楽しみだ。
二日目は大きなアウトレットに買い物に行った。仕事をやめてからいろいろあって髪切ったり舌ピ開けたりしたので、服装も変えてしまおうという試みだった。
とても素敵な服を買えた。自分一人だとなかなか試着したり、店員さんに話かけられたりが難しいので、誰かがいてくれると安心する。
猫カフェにも行った。漫画飲み放題、飲み物飲み放題で、しかも猫と触れ合えるのだから、こんなに心安らぐ場所もなかなかない。
『魔入りました!入間くん』を最新刊まで読んでしまった。デビキュラムの話がすごく好き。アムリリスがめちゃくちゃかっこよかった。
漫画読みながらたまに猫と戯れあって、ココアを飲んで、友達と話す。とても有意義な時間だった。
そういえばこの日の夜も小籠包を食べた。やっぱり皮に包まれた肉が好きなんだと思う。
三日目は帰らなくちゃいけなかったので、そんなにいろんな場所は行かなかった。服がもう一、ニ着欲しかったのでそれだけ買った。
ここでもいい買い物ができてよかった。初ジャンルの服を着るとなると、店員さんがいろいろ教えてくれるから楽しい。
そう思えたのも友人のおかげだから、本当にありがたかった。
帰ってからもう一月近く経っているので、細部を書き起こそうとすると難しいけど、とにかく楽しかった。
走馬灯に加えておいてほしい。
泣くくらい暗いエッセイ 冬場蚕〈とうば かいこ〉 @Toba-kaiko
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