8どちらといっしょ?
2年次に上がって、学校生活を送っているうちに、委員会運営も大事になってくる。
学年後期には、学内各委員会の委員長も2年生から選抜されて、3年生前委員長たちよりバトンを渡されるのだ。
1年次から学級委員をやっていたみさやとあくまくんは、先生も毎入学ごと問題になり頭を抱える既存生と編入生決裂をよく治め、それでいて成績もトップをキ-プしあっていることから、先生からも大きな評価、推薦をされて生徒会書記をかけもちすることになった。
来生徒会長、副会長は2人だろうって、もうみんなの間でも決まっているようなものだった。
そして日常今はと言うと、学校生活はあいかわらずてんしちゃんとみさやの2人仲良しで過ごしていたが、こと、学級会の打ち合わせや生徒会の下準備など、委員のからむときとなると、みさやとあくまくんの2人トップが一緒に過ごしていた。
「てんしちゃん、お昼・・・」
「委員長、学年広報の制作についてお話しが、」
お昼ご飯をてんしちゃんと食べようとしたみさやがあくまくんに呼ばれる。
「あ、ごめーん、てんしちゃん。また今度!」
「大丈夫だよ。また今度ね。」
てんしちゃんはほほえんで、じゃあこっちで食べようよ。と、誘ってくれるグループに入ってお昼ご飯にする。
優しくて穏やかなてんしちゃんにみんな友好的だ。特に、先友生たちからはずっと見守られてきたし、仲間はずれひとりぼっちになることなんて、到底なかった。
みさやも、安心してあくまくんと打ち合わせできた。
放課後も、たびたびみさやとあくまくんは委員の仕事を教室でしてきた。
「また明日ね、てんしちゃん。」
「うん、みさやちゃんもあくまくんも委員のお仕事がんばってねー。また明日。」
てんしちゃんは、無垢にほほえんで2人を応援して、先に帰る。
クラスのみんなは少しの間は放課後の教室で他愛なくおしゃべりしていたりするが、ぽつ、ぽつり、と、帰り始めたり、部活に行ったりする。
しばらくすれば、教室には、みさやとあくまくんの2人しかいないことになる。
委員の仕事は、いつも夕方遅くまでかかる。暮れかけオレンジが差しこむしずかになった教室。
そこで、昼はみさやを‘委員長’呼びしているあくまくんが、‘みさやさん’呼びになる。次第に、
次第に、
こちらの2人の距離がひみつに短くと・・・
そして今日だった。
「みさやさんの髪、つやめいていて綺麗だよね。」
「え?そ、そう?ありがとう。」
「さわってみたいな。」
そう言うあくまくんの目は、妖しく美しい。その目でまっすぐみさやの目を見る。
「・・・、い、いいけど。」
その目に射すくめられて、柄にもなくみさやはちいさく返事をした。
あくまくんが資料の乗った机の上に構わず座って、みさやの長い黒髪にそっとふれた。
こちらには、整った髪の毛の、つやの光のわ。
それから、やさしくなでる。
何度か、それは続いて、みさやは、うつむき加減ほんのりほおを染めて、そのままに任せていた。
ふいに、あくまくんの体勢がみさやに近づいた。なんだろう、みさやが視線をあげると、あくまくんの髪がみさやの顔にかかって、みさやの頭に短い音が響いた。
その一瞬は理解できなかったが、みさやには直感で、そののちすぐにわかった。
‘あくまくんが頭にキスをした。’
みさやは驚いてぱっとあくまくんを見る。
「ごめんね、つい。こうして一緒にいてきたけど、みさやさんて公正で素敵なひとだよね。」
みさやはかあっと赤くなった。
「今の、誰にも内緒ね。」
あくまくんはほほえんで、しずかに人差し指をしーっと、八重歯の見える自分の口もとに当てた。
その出来事しぐさはあまりにロマンチックで、単純明快直感的なみさやの心が奪われるに充分だった。
みさやは秘密ごとなど苦手な性格だったが、むずがゆそうな口をしながら、こくん。
うなずいた。
今、夕日は沈んでいた。
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