5いっしょのがっこういこ

 あくまくんとてんしちゃんは6年生の夏休み。あくまくんとてんしちゃんの学校は幼稚舎から大学までの一貫校、エスカレーター式だけど、中学課程からは成績次第では上に上がれたり上がれなかったりする。他の学校からも受験して成績の良い子が入ってくる。

あくまくんは漢字が苦手でてんしちゃんは得意、てんしちゃんは算数が苦手であくまくんは得意、ということで、あくまくんはふたりとも中学課程に上がれるように、夏休みにてんしちゃんを海の見える別荘に勉強合宿にさそった。

「てんしちゃんももちろん中等部進むよね。」

「うーん・・・。」

「もしかして成績を気にしてるの?算数に自信がないなら僕、教えてあげる。ね、」

「そうだね。うん。」

 年の頃、この頃はもうあくまくんはお嫁さんお嫁さん言わなくなっていた。

でもふたりで波の音を聞きながらお勉強。

ベランダからの潮風がてんしちゃんのさらさらミディアムヘアをなびかせる。

わっかもたゆたうように揺れる。

なかなかいい雰囲気だった。

「ここの問題やっとわかった。ありがとうあくまくん。あくまくん?ぼーっとしてどうしたの?」

シチュエーションにまどろんでいたあくまくんは、はっとした。

「うん。やっぱり漢字の形って難しいなって、思わず放心してたんだ。うーん?」

そうそう、あくまくんも、こんな調子では、てんしちゃんにかっこがつかない。あわてて漢字練習帳をにらむ。

てんしちゃんはそれを見て、うーんと一緒に言って、ぽん。と、こんなことを言った。

「あくまくん算数得意でしょ?じゃあ、漢字も算数で考えられたらいいのにね。へんが何画、足す、つくりが何画っていうふうに。」

あくまくんはてんしちゃんを思わず凝視した。「ど、どうしたの?やっぱり変な教え方だったかな。」

「全然!そうか!画数算!それなら、その算数方式でいけば・・・形も何度の角度で描けばいいかで簡単に覚えられて・・・。」

わっとあくまくんが明るく一気にしゃべって、漢字練習帳に鉛筆と分度器をもってもくもく集中し始めた。

「わあ、あくまくん、すごいすごい。上手。」

てんしちゃんがうれしそうにほめる。

あくまくんはますますやる気が出た。

「よーし・・・」

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