第7話

ちょっとこわいはなし、と銘打ったのに、先に救いのあるオチをつけるのは怖い要素を半減させますが、いまの私はというと少しずつ垣間見えた別世界から元の世界へ戻りつつあります。


それはもしかしたら年齢のせいもあるかもしれないし、誰かにツケを払わせているかもしれませんが。


大きな理由としては、「それでも助かるから、いてくれていい」といってくださった上司と巡り会えたからです。


いま感じている別世界のことすべてをさらけ出せば、確実にやばい奴だと思われると思い込んでいたし、実際そうだと思うので、メンタルクリニックで処方された薬が少し効いて「あ、私おかしいな」と感じてからは仕事を辞めさせてもらおうと入社したばかりの会社で上司に話しました。


なぜ入社したばかりかというと、

前職を辞めてから調子が悪く家族のすすめでメンタルクリニックに行ってみようと予約をとったのですが、精神科は受診までの道のりが長く、どこも1ヶ月待ちはざらなのです。


前職を辞めてから求人を見ていた私は、そのタイミングで求人に応募しトントン拍子で面接の予定が立った頃にはやっと精神科初診の順番がまわってきて、薬を飲みはじめて数日後にはその会社に入社してしまっていたのです。


自分がおかしいと感じるものの、何がおかしいのかは曖昧でした。それでももやのかかった世界の中で必死に仕事を数日していた訳ですが、上司は私を法的に切る道を選びませんでした。


それは会社的にできなかったのかもしれないし、たまたまポジションとしてそれくらいでもよかったのかもしれない。採用したのに何を言ってるんだなのかもしれない。詳しいことはわからないけれど、とにかく居ていいとおっしゃり、私はそのおかげも薬のおかげもあって徐々に元の世界を見ることができるようになってきたのです。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る