ナカノと…

 「だから、ナカノでいいじゃないですかぁ~」


「有間!ふざけるのも良い加減にしてもらうか。」


「はい?私が何かしましたか?ねぇ、ナカノ?」


「だからナカノって呼ぶのをやめなさい!」


「えーーっ。何でなんで?なんでですか?

私のことは「有間」って呼ぶじゃないですか、それなら同じように3文字で!

ナ・カ・ノでしょ?」


今日はナカノがうちに来ている。

この人の動きは参考になる。

絶対に触らない家具、調度品、食物。

ナカノはこの邸の中のどこに毒が塗ってあるかを知っているからだ。


狂人のふりをしてナカノに近づいたり顔色を伺う。


「ナカノ~」


近くにある盃に酒を入れて差し出すと嫌そうな顔をする。

これ毒なのですね。その辺りの素直な反応は分かりやすくて有難いですよ、

ナカノ。


「有間いい加減に…」


そう言いながら寝所に押さえ込まれた。

まぁこれはいつものことなので今更抵抗することもないですが…。


従者は邸の蔀戸しとみどを下ろし空間を閉ざしていく。

ナカノは私の上で話始める。


「最近は志貴がここに来ているらしいな。」


「ですねぇ~。」


「何故ここに来てるのか知ってるか?」


「さぁどうでしょ~。」


「ほう、知らないのか。」


「(アナタの指図でこの邸や私の情報を集めようとしてるなんて) 知りませんよぉ~」


「此処に来るのは志貴だけか?十市といち(皇女)もここに来たいと言っていたが…」


「そうなんですか?」


「あぁ有間に興味があるようだ。」


「興味ですか?(それは私個人ではなくて、今後権力を持つかもしれないから唾つけたいだけでしょ)」


「知らなかったのか?有間がよければ…」


「私にですか?勿体ないですよぉ~(あんな色ボケの娘なんて願い下げです!)

あははは~」


「笑うことか?」


「あれ違いました?やだなぁナカノ!あははは~」


「また狂い始めたか?」


「へっ?何ですか?ナカノ言ってる意味が分かりませんよぉ~

私はねぇ皇女より志貴がいいなぁ~志貴!志貴!」


「あれは男だろう!」


「それを言ったらナカノも男じゃないですか~」


 「…。」


(あっナカノが黙った。失敗したかな?)


「いいか有間!オマエは私には逆らえないのだ!

私が自由にしていいものなんだ!

狂ったお前に言っても分からないだろうがな。

オマエの父君ですらこの私には敵わなかったんだ!

お前たち親子は私の意志で生きさせて貰ってること忘れるな!」


(私が狂ってると思って本音が出ましたね。そうやって自分が上であると権力を振りかざししたいんですね。いいですよ、ナカノ、お好きな様になされませ。)


「ナカノ。ねぇ…」


(首に腕を絡めて甘える様に誘う。

そうナカノの言う通りでなきゃダメなんですよね。生かされてる身ですからね。)


「有間は私のものだからな!」


ナカノの押さえ込む腕に力が入ってる。身動きとれない。


「は~い!

(私の自尊心を傷つける様なことをして狂ったふりをしてないか確認してる。

ナカノ頑張ってますね。) ふふっふふふっあははは~」


「何だ何かおかしい?」


「ナカノって可愛い~

ねぇねぇナカノ。それで志貴はくれないの?」


「オマエにはそんな権利はない!」


「えーーーっ!やだぁ!ねぇナカノいいじゃん!ねぇねぇ!ナカノのケチ!」


「子供かオマエは?」


今の私達の状況を見回してから、ナカノを見て…


「子供はこんなことしませんよ。くすくす。」


この言葉を最後に言葉ではなく体での交流に変わる。何の意味も生産性もない交流に…。


秋津はベッドから飛び起きた。

夢で見た事が信じられなくて頭が混乱している。

あ、あれって…。男色?

ナカノとそういう仲だったのか?


さらに狂ったフリをして声に出す言葉とはウラハラに本音は現実を見つめていることも分かった。


有間って意外としたたかなのかもしれない。


したたかでも嵌められる様ではお話になりませんけどね。


有間声が遠くから聞こえた気がした。

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