本音語り その弐
秋津は有間皇子の毒舌が面白くなってきた。
上品に見える時代の頂点にいる人物の
自分だけこっそりと芸能界の裏話を聞いている様な気分になっていた。
有間皇子の来歴を探す。
えっと… 父親の孝徳天皇が即位していたが実権は中大兄皇子が握っていたが
中大兄皇子とは不仲だったと…。
不仲もなにも最初から違っていますから。
少し怒気を含んだ有間の言葉が聞こえた。
その後、中大兄皇子は孝徳天皇の意見を聞き入れず倭京に遷都。
皇后の間人皇女も一緒に倭京に戻ったのか?
えっ…嫁がダンナほって行っていいの?
あの方は中大兄皇子の血筋の方ですから。
権力のない者に用はないのですよ。
間人皇女に対しても良い印象はないらしい。
その翌年、失意の中孝徳天皇は崩御した…。
失意も何も…。騒がしくなくなってホっとしていましたよ。
私達親子は静かに暮らしたかっただけなのです。
たぶん、きっと、かなり高い確率で毒殺されてると思います。
邸の中には危険なものが沢山ありましたからね。
私の命も危険に晒されていましたから。
それで狂人のふり?
身を守るには、それくらいしか良い案が浮かばなくてですね…。
有間は苦笑した。
そして狂人は牟婁の湯に療養に行ったわけだね?。
その温泉で完治したと、よい温泉だと口コミしたってわけか。
はい。そうですね。
実際、邸の中は家具にも食べるものにも毒が付着していることが多くて
体調が悪くなっていましたからね。
牟婁の湯まで毒の入ったものはついてこないので完治しますよね。
当然のことですけど。
有間がケラケラ笑っている。
病が完治したら命狙われるんじゃないの?
体調が良くなっただけで狂人のフリはそのまま続けてました。
志貴に言わせると狂人のふりしなくても、どこかしらおかしいらしいですけれど。
孝徳天皇と中大兄皇子って仲悪いの?
良いはずがない。
ナカノ達は大王が何をするのか理解できていないのです。
政権を握り、金や権力を求め、圧政で人々を苦しめるのが
大王の仕事だと思ってましたから。
でもさ、歴史上の人物で実権を握りたい人が全て悪人とは限らないでしょう?
そうかもしれませんね。
人によるとは思いますが、あの人達は権力の権化ですから。
じゃあさ、本来の大王のすることって何なの?
祈るのです。
ただひたすらに。この世の平和を、民衆の平和を祈るのです。
それって楽しい?
はい。父君も私もそれが生きがいでしたよ。
父君は、そのことをナカノにも懇々と諭していた様ですが
全く意に介さず鼻で笑っていましたね。
それにナカノは…
その後の言葉が出てくる時、有間は眉間にしわを寄せ
厳しい表情になっていた。
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