第9話
その日の夜。
「……と、ちょっといいかな?」
「……!」
誰かの声に呼ばれて目を覚ました。のはいいものの、まだ外は暗く、夜が明けた様子はない。それに、私のベッドの椅子に誰かが座っている。私を起こしたのはこのひ……
「ひっ!」
つい声を上げてしまった。
それは、私だったから。
「わ、わ、まさかドッペルゲンガー?」
「違うよ」
すぐ否定されてしまった。
「じゃあ、あなたは、誰?」
「あら、華から聞いてなかったかしら?」
華さんを呼び捨てで?一体、誰……?
「ヒントは雪女」
「あ、まさか……」
聞いたことある。自分のことを雪女と称する人の話を。
「宵咲翡菜よ。はじめまして」
「はじめまして。私は……」
「言わなくていいわ。全て見てて知ってるから」
「見ていた?」
「なぜか私は成仏できてなくってずっと華を見ていることにしていたのよ。そうしたら、華があなたに出会っていてびっくりしたわ」
「そうですか……」
「翠さん。あなたにお願いがあるの。」
「なんでしょうか?」
「簡単な話よ。一日でも長く生きて。華の為に。私の為に」
「えっ」
「あなたが華を私たちがいなくても大丈夫なように導いてあげて」
「私が……導く?」
「そうよ。頼んだわ。翠さん……」
※ ※ ※
朝、目が覚めると泣いていた。
「託されたんだ……私」
私は確かに翡菜さんと話して華さんを託されたんだ。
「やってみますね。翡菜さん」
私が呟くのと同時に看護師さんがやってきた。
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