第6話

 お昼過ぎ、そのお姉ちゃんがやってきた。お姉ちゃんは私を見るなりまた目に涙を浮かべている。

「泣かないでお姉ちゃん。すぐにいなくなるわけじゃないんだから」

「そんなの誰にも分からない。だから……だからっ……」

「お姉ちゃん、大丈夫だよ。黙って勝手にいなくなったりしないから」

 

 宵咲さんは意識を失って何も言わないで逝ってしまったと聞いた。私はそんな死に方は嫌だ。

「けど、泣いてるお姉ちゃんの前では死にたくはないかな」

「……」

「看取られるのも嫌だな。死ぬときは一人がいい」

死ぬ間際の猫みたいに、誰もいない草原とか、森とか砂浜とかで静かに眠りにつきたい。

そんなことを考えたりもしている。

「……退院したらいっぱい服を買ってあげる。いっぱいおいしいもの食べさせてあげるね」

「うん、ありがとう」

「私もその日が来るまで頑張るから、絶対に諦めないで」

「うん」


 お姉ちゃんは帰っていった。つまり、私が頑張ればお姉ちゃんとお買い物できるってことだよね?そっか、そうだよね!楽しみだなぁ

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