第2話 境内

「フー…」

 セーフだ。


 外へ出ると風が強い。

 冷や汗が一気に乾いていく。

 なんと爽快だろうか。


 ざわざわと鳴る木を下から見上げると、蠢く葉っぱで暮れかけた空が見えなかった。

 きっと、この辺りの土地の養分やら何やらは、この樹齢何百年なのか分からない古い木達が、全て吸い上げているに違いない。

 高く高く、どこまで伸びているのか分からない木々を見ていると、ゆっくりゆっくり遠くなっていく。

 ふわーっと木が大きくなっていく様な、自分が小さくなっていく様な、目眩に似た不思議な感覚に怖くなる。


 不気味にも思える木々から溢れるマイナスイオンに包まれ、この場所に身を置くのが昔から好きだった。


 いつぶりだろうか…


 思い出せない程、久しぶりに入ったお寺を懐かしく見渡すと、参道の向こう側に知らない建物が建っていた。

 新しい建物は、この場に馴染めず浮いている。

 それに比べて、こちら側の御札授与所は昔のままで、斜め後方から見ていると、倒れてしまわないかと心配になる程に古くなっていた。


 ふと、奧の方で何か動いているのに気付いて、生い茂る木の葉の隙間に目を凝らすと、授与所越し、本殿の側に白い物が浮かんでいるのが見えた。


 上がったり下がったり、くるくる回っているようにも見えるけれど、遠くてよく分からない。


 なんだ…


 UFO…


 UFOにしては小さいか…

 光ったりしていないし…

 でも…

 UFOって見たことないから…

 どうなっていたらUFOなのだろう…

 UFOとは…

 正しいUFOって…

 んー…

 UFOの正解が分からない…




 え…


 UFOなのか何なのか分からない白い物は、少しずつ横へ広がって行き、2つになった。

 2つは動きを揃える様に、ふわっふわっと上下しながら、膨らんだり細くなったりと、海月の様にも見えてくる。

 不思議な動きに見入っていると、2つとも揃って参道の上を移動している様に見えた。




 こっちへ来る…


 不意に怖くなって、授与所の影に慌てて隠れた。

 息を潜めて壁に張り付くと、手のひらに何かがぼろぼろと付いて気持ち悪い。


 おえ…


 顔をしかめて手のひらを払っていると、目の前の参道に気配を感じて顔を上げた。


 はっ…

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