ふしぎな転校生現る?!
・ある日恵実のクラスに金髪碧眼の転校生がやってくる。黒板に自分の名前を書き終えた転校生は、みんなの前で自己紹介を始めた。
ルカ「ボンジュール!僕は
・ルカの席は恵実のとなりだ。恵実と目が合ったルカはにこりと笑って会釈する。
ルカ「きみの名前は?」
恵実「桜貝恵実だよ。恵実って呼んでね!」
ルカ「うん、よろしくね恵実!」
・ルカは恵実と握手をかわした直後、密かに口角を上げた。授業中小さく鼻歌を歌うルカに気づいた恵実はルカに手招きをして、互いの机を少しずつ寄せあった。
恵実「聞いたことないメロディーだね。なんの曲なの?」
ルカ「あーやべ……コホン、誰にも言わないでほしいんだけど、僕が作った曲なんだ」
恵実「えっすごい!!!」
・恵実が大声を出してしまったことで、ルカの鼻歌についてクラスメイト全員に知れ渡りそうになる。恵実はみんなの前ではぐらかそうとしたがルカに手で制止される。
ルカ「いやあバレてしまってはしょうがない。実は僕、恵実に一目惚れしちゃいまして!恵実に愛の言葉をささやいてたんだ」
恵実「えっ、」
ルカ「恵実、ジュテーム。愛しています」
・ルカの大胆な告白に、クラスの女の子から黄色い歓声が上がる。恵実は目を白黒させて身体はカチコチに固まってしまった。そして恵実のすぐそばにいたセキも硬直し、その様子をシャルに揶揄され、リマとウメは顔を赤らめて互いを見つめ合った。
・放課後クラスのみんなと別れたルカは十字路を曲がり、人気のない場所に停まっている黒いリムジンに乗りこんだ。ルカは車の進行方向とは反対向きに設置されたセカンドシートに座り、サードシートに座る人物と対面する。
?「小学校はどうでした?」
ルカ「まあまあでしたよ。お嬢さまと同じく、僕も家庭教師の授業しか受けたことがなかったので新鮮でしたね」
?「……」
ルカ「というかお嬢さま自ら車内までお出迎えいただけるなんて。屋敷でお待ちいただいても良かったのに」
?「そんな話はどうでもいいですわ!学校での恵実の様子を教えてくださる?!」
・ルカと車内で会話していたのはメィだった。メィの左脇に座っている屈強なボディガードが、丸い黒帽子と麻布をルカに手渡す。ルカは慣れた手つきで金色の髪を全て帽子の中に収め、碧い瞳を布でおおった。実は恵実とルカは先日のクルージングで出会っている。そう、ルカの正体はメィに仕える見習いボディガードであった。
ルカ「特段変わった様子はありませんでした。ただ、ちょっと厄介なことになってしまいまして」
?=メィ「なんですって?」
ルカ「ミッション遂行中第三者に怪しまれてしまい、それを取りつくろうために……恵実のことが好きだと、みんなの前でウソの宣言をしてしまいました!ほら、やっぱり素人の僕にスパイ活動なんてムリだったんですよ!」
・ルカは開き直って訴える。メィから命令された極秘任務は、恵実の通う小学校への侵入と恵実の偵察であった。勝手な行動をしてしまった罰は甘んじて受けるつもりだ。ルカの覚悟とは裏腹にメィは高らかに笑い出す。
メィ「上出来じゃないの!本来は恵実の動向を把握しわたくしが恋のバトルを制するつもりでしたけど。ルカ、次の任務を命じますわ!恵実を惚れさせなさい!」
ルカ「はあっ?!」
メィ「恵実がルカとくっつけば、わたくしは誰にジャマされることなくセキさまとイチャイチャできますわ♡おーっほっほっほっほ!!」
ルカ「えーっ嫌なんだけど……って聞いちゃいないか。ワガママな
・メィがとうとうと語るのを右から左に流し、ルカは車窓の景色をぼんやり眺めていた。
ルカ(はーあ、セキのことになるとお嬢さま、意固地になるんだから。そういえば前に黒緋組の若頭が来たときも……)
・クルージングを終えた翌日のこと、
宣「この度は誠に申し訳ございませんでしたッ!!」
若衆「「「ッしたァ!!!」」
メィ「問題ありませんわ。菓子折りも受けとります。こちら側も冷静に対応すれば済んだことですし、ひとまずは手を打ちませんか」
見習いボディガード「お嬢さまよろしいのですか?!だってケンカを吹っかけてきたのは向こう側、」
メィ「あなたは黙ってて。宣、わたくしの言葉は
宣「あ、ありがとうございます……!」
・宣の深いお辞儀を見下ろし、見習いボディガードもといルカは顔布の奥で唇を噛んでいた。
見習いボディガード(セキに迷惑がかかるのを避けたいんだろうけど。僕の仕える主が、こんなならず者に譲歩するだなんて信じたくない。セキと出会う前ならあり得ないことだ……!)
🌸
・次の日の学校の昼休み、物思いにふけっていた恵実にリマが話しかける。
リマ『元気ないわね。どうしたの?』
恵実『宣が心配なんだ。クルーズ船でのこと、気に病んでないかなって』
リマ『恵実のお父さんに平謝りしていたものね。花火玉が船に落ちそうになったのは事故だからって、誰も宣と宣の家の人を責めなかったけど』
恵実『端から見たら宣のお手伝いさんが悪いことになっちゃうのかなあ』
・恵実とリマのテレパシーを聞いたシャルとウメも、二人のそばにやってきた。
ウメ『宣は神さま見習いやフロイデといった、人ならざるモノの実態を知らないからな』
シャル『ふえぇ、誤解したままなんてかわいそうですぅ。いっそ宣おにいちゃんに、人ならざるモノについてバラしちゃうのはどうでしょう?』
ウメ『なるほど』
恵実『いいアイデアかも!』
リマ『宣にどうやって伝えるべきか、みんなで話し合うわよ!』
・恵実たちが教室を出て移動する。その少し後をルカが尾行する。
ルカ(恵実の周りにいるのって、クルージングで大型船に乗ってたヤツらだよな。恵実と僕以外には見えてないっぽいけど。どうなってんだ?)
・実はルカはクルージングでフロイデに襲撃された日をきっかけに、なぜか『人ならざるモノ』を認識できるようになっていた。他方で恵実たちのテレパシーを受信することはできなかったが。
シャル『そういえば今日の晩ごはんはなんですかぁ?』
恵実『お父さん特製のオムライスだって!あたし大好きなんだ、シャルも食べる?』
シャル『わーい!おじゃましますぅ!』
リマ『セキ、今どこにいるの?作戦会議始めちゃうわよ!』
セキ『鍵は開けといたから先行っといてくれェ』
・恵実たちはうす暗い階段を登り、立入禁止のはずの屋上へとつながる扉を開けた。
セキ「うちの恵実になんか用かァ?」
ルカ「!」
・ルカの背後で腕をくみ威圧するセキ。セキの威嚇にルカはイラついたものの、面倒ごとに関わりたくない気持ちの方が勝った。よってルカは『セキのことが見えず声も聞こえないフリ』をすることにした。
ルカ「あ、あれ〜。恵実はどこに行ったのかな〜。恵実のことが好きだから、一緒におしゃべりしたかったのにな〜」
セキ「て、テメェもう一度言ってみろォ?!もし聞き間違いじゃなかったらよォ……五体満足で帰れるとでも思ってンのかァ……?」
ルカ(ひぃ〜脅されてる。でもこれで確信した。こんなヤンキーにお嬢さまの彼氏役が務まるはずがない!)
・後ろをふり向かずに階段をのぼっていくルカと、それと同じ速度で追尾するセキ。扉の前まで追いつめられたルカは、平然を装いつつドアノブに手をかけた。
ルカ「恵実の声が聞こえた気がする〜。ひょっとするとこの先にいるのかも〜」
セキ「クソがッ待てェ!!」
・セキが首根っこをつかむより先に、ルカが戸を開き屋上へと足を踏み入れる。そこでは恵実が、ミュージカル・エンジェルのコスチュームを着て歌の練習をしていた。
シャル「どうしましょう!『人ならざるモノ』について、宣おにいちゃんに歌でプレゼンする練習を見られてしまいましたぁ!」
セキ「なァんでよりにもよって歌なんだよォ」
リマ「歌には魔法がかかっているの!愉快な音にフレーズを乗せると、みんなノリノリになって踊りだしちゃうのよ!」
ウメ「宣に、リラックスして聞いてもらうための手段。リマが言うんだから間違いない」
セキ「アーソウデスカ」
・神さま見習いたちの会話を小耳にはさんだルカは、言いわけを考えあぐねているらしい恵実に歩み寄る。
ルカ「歌うの得意なの?」
恵実「え、」
ルカ「歌。ここで歌ってみてよ」
恵実「わ、わかった」
・普段ミュージカル・エンジェルの姿で戦うときに使用する曲をルカの前で披露する恵実。今日は青空下のコンサート日和だ。陽の光がさんさんと降りそそぎ、時折心地いい風がそよぐ。恵実のはつらつとしたソプラノの歌声に、ルカを含む全員が惚れぼれしている。
・恵実が歌い終わると、おもむろにルカが手をたたく。神さま見習いたちもそれにならった。
恵実「ルカお願い!ここで見たこと聞いたこと、誰にも言わないで!」
・恵実の祈るように合わせた両手をルカは優しく包みこむ。
ルカ「恵実の頼みだ、二人だけの秘めごとにすることを約束するよ」
恵実「ありがとうルカ〜!」
ルカ(だって巻きこまれたくないし)
恵実(よかった、丸く収まったよ!)
セキ(コイツうさんくせー)
・校庭から地鳴りのようなうめき声が聞こえてくる。憂の拡散したフロイデにより学校の子どもの感情から怪物が誕生したのだ。恵実は屋上フロアを包囲するフェンスをよじ登っていく。
恵実「ごめんねもう行かないと」
ルカ「おいどこへ行くんだ?!」
恵実「困っている人たちのところへ!」
・恵実は柵の上から跳びはねる。翼を生やした神さま見習いたちに囲まれながら、恵実はまるでウサギのように軽やかな足取りで木々をつたって着地する。天の声に従い、新たな武器であるミュージカル・タクトをあやつって怪物と交戦する恵実。その光景を格子に手をかけてふかんしていたルカは、安堵からため息をつき床に座りこんだ。
ルカ「厄介ごとは御免だけど……素晴らしい歌声だったな」
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