クルージング危機一髪?!
・メィはセキを夜のクルージングへと誘う。恵実の同伴はメィによって断られた。なんでもメィの自家用クルーザーは二人乗りであるという。メィに対抗するべく恵実は宣を頼ることにした。
宣「クルーザーに乗りたいんですか?いいですよ」
恵実「やったー!」
宣「その代わりと言ってはなんですが……恵実さんのご友人を何人か連れて来ていただいてもよろしいですか?」
恵実「もちろんいいよ!」
宣「ありがとうございます!それならせっかくですし、大型船を借りてみなさんでパーティしましょう!」
・とある夜の海辺、メィとセキを乗せた小型クルーズ船が出航した。小型といっても運転席のすぐ後ろにあるデッキには小洒落たソファとテーブルが設けられており、開放感あふれる空間で快適に過ごせそうだ。
セキ「二人用にしては広すぎねぇか」
メィ「そうでしょうか?おほほほ……」
・メィたちの後ろから近づいてくる巨大なボートの影。メィとセキを呼ぶ声に双眼鏡を持ってふり向くと、恵実とリマ、シャル、ウメそして宣が屋上のデッキで手を振っていた。セキと宣はメガホンを持って会話する。
セキ「テメェらも来てたのか!」
宣「はい!脇にいらっしゃるのはセキさんのご友人ですか?」
メィ「いいえ、わたくしはセキさまのフィアンセですわ♡」
セキ「んなワケねーだろ!」
恵実「違うよ!」
・恵実とセキ、メィのやり取りを聞いていた宣は小声でつぶやく。
宣「これは三角関係ってヤツですかね」
シャル「宣おにいちゃんは察しがいいですぅ。セキおにいちゃんがハッキリしないせいで、三角関係がこじれにこじれてるんですぅ」
宣「俺はセキさんにちょっと同情しますねぇ。小さな女の子に言い寄られても困っちゃいますし」
シャル「その心配はご無用です!だってセキおにいちゃんは神さま、」
宣「かみさま?」
リマ「宣!さっきボートの運転手さんが呼んでたわよ?!」
ウメ「急いで、行ってあげないと」
・宣は操縦席へと走り出し、シャルの失言は水に流された。二隻のクルーザーが並んで巡航する。しばらくすると、メィの船の方から美味しそうな匂いがただよってきた。
メィ「うちのシェフ特製のディナーコースですの!メインディッシュは海の幸をふんだんに使ったアクアパッツァですわ!」
・宣の船でも夕食の用意ができた。恵実たちはデッキで海上のバーベキューパーティを楽しむ。
恵実「風が気持ちいいー!」
ウメ「海の上で食べるお肉は、格別」
シャル「リマおねえちゃん、ピーマン代わりに食べてくださいぃ……」
リマ「好き嫌いはダメよ。アタシも一緒に食べるから、シャルもがんばって!」
シャル「ふえぇ、わかりましたぁ。あれ?ピーマンおいしいですぅ!」
リマ「えらいわシャル!」
ウメ「みんなで楽しく食べると、苦手なものもおいしく感じる」
・ヤクザの家系であることから疎まれ、今まで友だちがいなかった宣。友だちに囲まれて食事をすることが宣は嬉しくてたまらない。宣は弾む気持ちでメガホン越しに声をかける。
宣「メィさん、そちらのクルージングは順調ですか?」
メィ「アクアパッツァの香りが、陳腐なバーベキューの臭いで台無しですわ」
セキ「いやそんなことねーだろォ」
メィ「宣とか言いましたね、あなた!嫌がらせのつもりですの?!大きな船からわたくしを見下して!」
宣「そ、そんなつもりはないですッ!!」
メィ「はぁ、しかもそのナヨナヨした話し方〜!せっかくセキさまに似て凛々しい顔立ちなんですから、もっと自信をもったらいかが?!わたくしあなたのこと嫌いですわ!」
宣「え、えぇ……?」
・にわかに轟いた音と鮮やかな光。激しいゆれが恵実たちを襲う。
シャル「きゃあ、嵐ですかぁ?!」
ウメ「いいえ、これは……花火?」
・そのころ海岸では黒緋組の構成員が
宣「ッたくアイツら!カタギとは争うなって散々言うたやろ!」
セキ「恵実、変身するぞォ!」
恵実「わかった!メィも協力して!」
メィ「命令しないでくださる?!ちょうど今から戦うつもりでしたのに!」
・変身した恵実とメィは、クルーザーに向かって飛来するフロイデをはね返す。しかしながらその数は膨大で、甲板に被弾するのは時間と運の問題だ。恵実たちが混乱に陥っていく中で宣は決断する。二隻の船を岸へ接近させるよう運転手たちに指示を出したのだ。
ウメ「港に近づいたら、危険」
宣「ここは俺に任せてください。部下の失態をカバーするのはカシラの役目ですから」
・宣は隠し持っていたピストルを構え、ふりそそぐフロイデを撃ち落として道を開く。弾は全て命中したが、たった一塊の撃ち損じたフロイデが、あろうことかシャルに向かって急降下する。
宣「あかん間に合わへん……ッ!」
・一つの人影が宙を舞う。彼はとび蹴りの要領でフロイデを打ち返し、水面へと軌道を曲げる。そのとき打ち上がった本物の花火玉があたり一面を照らした。突如現れたその人物は大きな黒帽子をかぶり、顔をおおう布をなびかせている。
シャル「もしかしてあなたは、見習いボディガードのおにいちゃん!」
見習いボディガード「は?誰あんた」
シャル「あっその、メィおねえちゃんからあなたのお話を聞いたんですぅ!」
見習いボディガード「ふーん、まあいいや。お嬢さまの安全が第一だけど、その横でくたばられても後味わるいし。危ないからさがってて」
・見習いボディガードはメィと同い年かつ腐れ縁の用心棒だ。護衛のためメィのクルーザーに同乗していた見習いボディガードは、宣の援護をするため船から飛びおり、宣の船の外板をよじ登っていたのだ。
宣「すみません、俺が不甲斐ないばっかりに」
見習いボディガード「いや仕方ないって。そっちの船の方が守る人数も多いし。まあこの僕が来たからには、大船に乗ったつもりで安心しなよ」
宣「実際に大きな船には乗ってるんですけどね……」
・宣と見習いボディガードの協力のおかげで、二隻のクルーザーは沈没することなく着港した。しかしながら港で花火玉を発射していたはずの黒幕を見つけることができない。
恵実「一つ思いあたることがあるんだ。みんなはここにいて!」
宣「えっちょっと待ってくださいッ!!」
・宣の忠告をふり切り、ライトニング・エンジェルの姿のまま夜の海に飛びこむ恵実。魔法で生み出した光の玉を頼りにもぐっていくと、サメを模したフロイデの怪物と対峙した。恵実の考え通り、花火玉に擬態して海中に沈んだフロイデこそが怪物の本体で、集まってサメの形となり恵実の前に現れたのだ。恵実の強力なキックで怪物を弱らせ、浄化技を発動する。
・一方そのころ陸では、船に乗っていた仲間たちが暗い沖を見守っていた。突然海が白い光を放つ。光が収まるのを確認したあと、セキとリマ、シャルが恵実を救助すべく入水した。残りのメンバーは波止場に残ることとなり、不安を覚えるメィはウメの手を強く握りしめている。
ウメ「ライトニング・エンジェルの魔法の媒体は雷。雷つまり電気は海水に伝わりやすく、本人が感電する恐れがある」
メィ「恵実は無事ですの?!」
ウメ「変身していたから命に別状はないはず。ただ感電によるショックで、気を失っている可能性が高い」
メィ「ああ……そんな」
見習いボディガード「お嬢さま、お気を確かに」
宣「セキさんたちは暗い海に潜って大丈夫なんですか?!これ以上行方不明者が出たら俺はどうしたらいいんですか?!」
ウメ「だ、大丈夫。リマたちは特別な訓練を受けている」
宣「特別な訓練ってどんな?!」
ウメ「宣……お前はもう寝ろ」
・デタラメを思いつかなくなったウメは魔法で宣を眠りにつかせる。手荒な扱いをしすぎたか、とウメは内心反省した。
・しばらくすると沖から三人が上がってくる。セキの腕の中には変身の解けた恵実が横たわっていた。メィとウメ、見習いボディガードが恵実のもとへかけ寄る。
メィ「恵実、起きなさい!あなたがジャマしないのなら、わたくしがセキさまと結婚してしまいますわよ!……ねえ恵実。目を覚ましてくださいまし。こんな所でくたばったら、わたくし許さないんですからぁ!」
シャル「うわああぁぁん!!」
・メィの涙ながらの訴えに全員が悲しみに暮れていると、ふいにセキが恵実の唇に口づけをした。
セキ「テメェら、あきらめンのはまだ早ぇぞ」
ウメ「そ、そうだ人工呼吸!心臓マッサージも!」
・リマが心臓マッサージを行い再びセキが恵実の口に空気を送ると、恵実が咳きこみ始めた。
恵実「……あれ、みんな……?」
・恵実の生還にみんな歓声を上げ、その音量で宣は目を覚ました。宣の家の車で自宅に送り届けられた恵実は、シャルとリマからはやし立てられセキにキスされたことを知る。これにてめでたしめでたし、とはならなかった。宣が向ける蔑みの視線の先には、花火の場所取りをしていた組の若衆たちが地面に頭をこすり付けていた。
若衆「カシラ、申し訳ございやせん。相手が融通を効かせないもんでして」
宣「やかましい。次やったらヤキ入れんぞ」
若衆「エンコ詰めの覚悟はできとります」
宣「アホぬかせ、当然や」
・自室に戻った宣は机につっ伏し、一人思いつめていた。
宣(最悪や最悪や!俺のせいで恵実さんたちを危険な目に合わせてしもうた!
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