セキとそっくりな青年?!

・ある日恵実の黄緑色のリボンが風に飛ばされてしまう。リボンを追いかけて恵実がたどり着いたのは、広大な和風の邸宅だった。事情を話すと家主の息子である黒緋くろあけせんが恵実を迎え入れる。宣の姿を見た恵実はうろたえる。宣はセキの生き写しであったからだ。恵実の顔色が優れないことを心配した宣は、自身と恵実のおでこをくっつけようとする。


恵実「へっ?!あ、あの宣!ちょっと恥ずかしい……」

宣「すすすすみませんッ!!幼い頃母にしてもらったんで、これが熱を測る正しい方法だと思ってしまいましたッ!!ご無礼をお許しくださいッッ!!」

恵実「大丈夫!もう大丈夫だから土下座はやめてぇ!」



・宣は少々世間知らずだが思いやりのある青年であった。宣と恵実の性格には似通ったところがあり二人はすぐ打ち解けあう。


恵実「宣の不器用なところ、あたしと似てるよね。あたし、こんなにすぐ誰かと友だちになれたのは初めて!」

宣「え、あ、もう一度仰っていただいても?」

恵実「あたし、宣と友だちになれて嬉しい!」

宣「スゥ〜……こんな俺を友人と言っていただけるんですかぁ……冥利に尽きます……」



・恵実のリボンは中庭の木の枝に引っかかっていた。宣の制止をふり払って恵実は木に登り、リボンに手を伸ばす。


宣「危ないですよ!俺が同じものを買ってあげますから、お願いです!降りてきてくださいっ!」

恵実「ごめんね宣!これはおばあちゃんにプレゼントしてもらった、世界に一つしかないリボンなんだ!あともうちょっと……!」



・リボンをつかみ取るや否や、恵実は身体のバランスを崩し落下する。宣は恵実を助けるべく走り出すが小石につまずき転んでしまう。恵実はうつ伏せになった宣の背中に尻もちをついた。その衝撃で宣のメガネが外れる。


宣「おケガはないですかっ?!」

恵実「……うん、大丈夫……」

宣「あはは、お恥ずかしい。でも心配いりませんよ、頑丈なのが俺のとりえですから!」

恵実「はあびっくりした。メガネがないと、ますますセキにそっくりなんだもん」

宣「セキさんとは一体どちら様で?」



・つむじ風が舞う。気がつくと恵実は相手と向き合う体位でセキの胸の中にいた。セキは鋭い目つきで宣を見下ろしている。


セキ「アイツに何かされたのかァ」

恵実「いや逆だよっ!宣はあたしのリボンを一緒に探してくれたんだよ!」

セキ「その割には身体がボロボロじゃねーか」

恵実「身体がボロボロなのは木登りしたからで、」



・セキの後頭部に突きつけられた銃口。先ほどまで足元でうずくまっていたはずなのに、セキは宣に背後をとられていた。セキと瓜二つの顔をもつ宣であったが、セキの姿や声は認識できない。ところが宣は恵実とのやり取りとわずかな気配のみで、セキの身長や体格をおおよそ予測することができた。


セキ「ヒュ〜お見事」

宣「……オマエがセキかァ?恵実さんは初めてできた俺の友人やねん。手荒に扱うのはやめてくれへんか」

セキ「ほォ、たいしたタマだなァ!こんなに血気盛んなヤツと相見えるなんてよォ」

宣「チッこすい野郎や。さっさと正体を現せ」

セキ「ほらよ、お望み通り実体化してやる。これでテメェにもオレの存在が認識できンだろォ?」

宣「俺と同じ顔。鉄砲玉かなんか知らんが、よくできた変装やで」



・張りつめた空気を変えたのは憂とフロイデの怪物による奇襲だった。


憂「ハハハハハ!どこだ恵実、共に神々を滅ぼそうじゃないか!」

恵実「宣、お願いがあるんだ。しばらく目をつぶっててほしい」

宣「はぁ?そんなんできるわけ、」

恵実「あたしたち友だちだよね?友だちなら、あたしの言うこと聞いて!」



・友だちという言葉に反応して、宣の頬が小刻みに震える。宣はすぐさま自身の目を覆った。


宣「わかりました!俺たちは友人ですもんね!うわ〜照れますねぇ、友人から頼みごとされたのなんて初めてですッ!!」

セキ「テメェはそれでいいのかよッッ?!」

恵実「ふぅよかったー。セキ、今のうちに変身しよう!」



・セキと変身した恵実はまたたく間にフロイデの怪物を打ち破る。


恵実「宣、もう目を開けていいよ!そういえばさっき何か持ってなかった?」

宣「えっと、チャカはホラ、実はおもちゃなんですよコレ!」

セキ(拳銃な。いや絶対本物だろォ)

宣「それより恵実さん、セキさんとの関係について聞かせていただけますか?回答次第ではちょっと裏でお話させてもろても、」

恵実「セキはあたしの友だちだよ!」

宣「……ともだち」

恵実「うん!ちょっぴり乱暴だけど、頼りがいがあってすごくカッコいいんだ」

宣「疑ってすみませんでしたッ!!」

恵実「ええっまた土下座?!」

宣「恵実さんとそのご友人が本職なわけないですよね!大変失礼いたしましたッ!!」

恵実「もうわかったから顔を上げて!」

宣「わかりました!あのセキさん、同じ顔のよしみでその……俺と、友人になってくださいッ!!」

セキ「はァ。いいけど」

宣「ホンマですかぁ〜〜!!ありがとうございますぅ〜〜!!」

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