さようなら、無の女神?!
・フロイデの数は減少の一途をたどる。しかし無の女神はリマの奪還を急ぐどころか憂の行動に疑念を抱くようになる。
憂「なぜ屋敷でリマを捕らえなかった?!」
無「……」
憂「答えろ無の女神!!」
無「ワタシたちは、なぜ感情の神を倒そうとする?」
憂「それは俺たちが神々を倒すために生を受けたからだ。どうした無の女神?今まで
無「……少し席を外す」
・一方そのころ恵実の部屋では、セキがユーレイ屋敷でうめから眠りの魔法をかけられたこと、恵実がセキの頭上で舞う蝶を見たことをそれぞれリマに告げる。つまり、二人はうめと無の女神が同一人物であることを確信していたのだ。二人の意見をリマは肯定する。
リマ「アタシがうめを説得する。うめがいる場所に心当たりがあるの」
・一緒に行くという恵実を振りきり、リマはかつて縁日を開催していた桜が丘商店街へと飛翔する。そこにはリマの予想通り、人気のないベンチに無の女神が座っていた。
リマ「無の女神、あなたはうめなのよね?」
無「……」
リマ「どんな理由があろうとも、フロイデを使って人間を混乱に陥れることは重罪に値するわ。さあ、今から一緒に天界へ行って裁きを受けましょう」
無「……やめろ……」
リマ「え?」
・無の女神は顔を被うベールを破りその素顔をあらわにする。前髪をとめる灰緑の蝶のバレッタが、陽の光を反射してキラリと輝いた。
無「もうやめろ!これ以上ワタシを苦しめるな!リマが正しいのか、憂が正しいのか。ワタシはこんなに悩んでいるのに。なのに貴女は、ワタシの行動を罪だと断言した!」
リマ「ちょっと落ち着いて、」
無「貴女のその行動こそ、神様として称えられるべきものなのか?今までの行動は全て正しかったと貴女は胸を張って言えるのか?」
・リマは自身の行動を顧みる。自分が憂に捕まったせいで、フロイデが生まれてしまったこと。自分がセキやシャルの忠告を聞かなかったせいで、恵実に足をケガさせてしまったこと。無の女神からの問いに対する答えは、どちらもノーだった。
リマ「そっか。間違っていたのは、アタシの方だったのね」
・絶望したリマは自らが生み出した黒い渦に取りこまれていく。黒い渦の正体は、かつてフロイデの発生源として利用されていた喜びのエネルギーが絶望に染まったものだった。無の女神は渦の中へと飛びこみ、リマを追っていた恵実も二人の後に続いた。
🌸
・リマは暗黒の中をただよっていた。恵実と無の女神が必死に呼びかけるもののリマは目を覚まさない。
無「リマ、お願い……目を開けて……!リマ、リマぁ!」
恵実「無の女神、一体なにがあったの?」
無「……ワタシのせいで、こうなった。リマはただ無邪気に……リマの信じる正義に則って、行動していただけなのに。ワタシが、詭弁を使って、リマを責めた」
恵実「うめ、落ち着いて。気持ちが高ぶってしまうのは仕方のないことだけど」
無「たかぶる?ワタシ、が?ワタシは、全ての感情を、否定しなくちゃならない、存在」
恵実「ううん、だって涙を流しているじゃない。あなたはもう無の女神なんかじゃない。あたしたちの知ってるうめなんだよ」
・恵実は無の女神の気持ちを肯定する。心を持つことを許された無の女神は、自らの抱く感情を理解していく。リマからプレゼントされたバレッタをおもむろに髪から外し、自身の胸に押しあてた。
無(つらい。かなしい。くるしい。リマがいなくなることを考えると、胸がはり裂けそうになる。……そうか。ワタシは貴女に恋しているんだ)
・無の女神の黒いドレスは光に包まれ、リマたち神様見習いと同じ制服にチェンジした。バレッタと融けあった墨色の髪は灰緑に染まり、後ろで蝶の形に結われる。無の女神は楽しみの神様見習いウメとして生まれ変わったのだ。
ウメ「この格好は……?」
恵実「ウメの気持ちが天に届いたんだよ!」
ウメ「……そうだ、ワタシの前世は津田梅子。ワタシは神様見習いとなるはずだった魂」
恵実「ウメ、力を貸してくれる?」
ウメ「もちろん。リマを助けるために!」
恵実&ウメ「「みんな羽ばたけ!バタフライ・エンジェル!」」
・恵実が抱く希望のエネルギーにウメが力を乗せることで、恵実も新しいバトルコスチュームを身にまとう。新たな力によって黒い渦は消え去った。
ウメ「リマ、ごめんなさい、ごめんなさい。ワタシが感情をとり戻せたのは貴女のおかげなのに。ワタシ、なんであんなひどいことを……」
リマ「ウメのおかげでわかったの。アタシの正義感がどれほど独りよがりだったかってことをね。ウメには感謝しているわ」
🌸
・ウメの前世である津田梅子は天寿を全うした後、リマたちの通う神様の養成所である『プルチック学園』に入学する運命であった。しかし入学前に憂に囚われ洗脳されてしまったのだ。
・ウメを含めた神様見習い四人は、新たな任務として憂の真の目的を探るよう天から言い渡される。そのかたわら憂は、フロイデを生み出す能力をもつ憎しみの魔女を仲間に加えた。憎しみの魔女はフロイデを子どもたちと呼び、フロイデに危害を加える恵実とメィ、そして神様見習いたちを恨んでいる。魔女は人間に扮して街中を歩き周囲の会話に耳を傾ける。道のまん中でころんでしまった、テストで悪い点をとってしまった、好きな人にフラれてしまった。人々の不幸話を魔女はあざ笑う。その感情こそがフロイデを精製するエネルギーとなるのだ。
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