あたしとそっくりな神様?!
・天の声はリマと恵実の関係が他人の空似であり、この偶然の因果は双方に特別な力を生じさせると告げた。恵実が神様見習いやフロイデといった『人ならざるモノ』の姿を認識できるのもこの力のおかげだ。恵実とメィは神様見習いたちと関わった以上、彼らのミッションに協力することを決意する。
・恵実の顔はリマの生き写しである。これを活用してリマは恵実にとある提案を持ちかける。
リマ「アタシが恵実の代わりに嫌なことをこなしてあげる!どう?喜びに満ちた生活を恵実に提供するわ!」
恵実「やったー!さすが喜びの神様見習い!」
セキ「オイオイ本気かよォ」
リマ「ええ!恵実に迷惑をかけたお詫びもかねてね。それにアタシ、人間にはすごく興味があるの。人間の嫌がることってどんなことなのかしら?あぁとっても楽しみだわ!」
セキ「あーそうかよ。勝手にしろォ」
・リマは実体化してウィッグを被り、恵実の苦手な算数の授業に出席する。
恵実「誰にもバレなかった?」
リマ「もちろん!授業中先生に当てられちゃったけど、大きな声でわかりませんと答えたわ!」
恵実「あははっリマらしいね!」
・恵実は嫌な授業を受けずにすむ。リマはどんな授業も楽しむ。恵実とリマはお互いに満足していた。それを良いことにリマが恵実になり代わる時間は延びていく。
リマ「今日は体育の授業があったわ!十段のとび箱に成功したのよ!」
恵実「じゅ十段?!あたしそんなに高く跳べないんだけど、」
リマ「なら次の授業もアタシが出るわ」
恵実「あたしたちの身長は全然違うよ。あんまり目立つと気づかれちゃう」
リマ「安心して!『恵実』は背が伸びたってことでみんな納得してるから」
・次の日、一人体育館におもむくリマを無の女神が引きとめる。
リマ「そこをどいてくれないかしら。とび箱がアタシを待ってるのよ!」
無「なぜ、とび箱を跳ぶ?」
リマ「恵実は体育が苦手だから、アタシが代わりに出席するの。とび箱ができなくたって将来恵実が困ることはないし。つまりアタシがとび箱を跳べばみんなハッピーになるのよ!」
無「……よく口が動く。疲れないのか?」
リマ「久々に目覚めたんだもの!むしろもっと喋って動きたいわ!」
無「アジトにいたときとは大違い。貴女はいつも眠っていたから、かしましい性格だとは思わなかった」
・無の女神の吐く息から蝶が生まれ、リマの周りを飛び回り鱗粉を振りまく。リマは睡魔に襲われ、まぶたがだんだんと上がらなくなっていく。リマが足からくずれ落ちそうになるのを無の女神が背中から支える。
リマ「なにこれ……身体が、重い」
無「ワタシの魔法は、神にも通用する。おやすみなさい」
・無の女神がリマを抱えてアジトまでテレポートする直前、無の女神のドレスをシャルがつかむ。シャルの身体は恐怖で震えていた。
無「なに……」
シャル「リ、リマおねえちゃんを返してくださいぃ!!」
無「……まあいい。貴方も一緒に、アジトに連れて行く!」
・無の女神の剣幕に気圧されたシャルは大声で泣きわめく。その騒音に耐えきれず無の女神は大きく後退するが、とっさにリマから手を離してしまう。意識のないリマの腕をつかんだのはシャルだった。
リマ「……んぅ、」
シャル「リマおねえちゃんが起きたですぅ!よかったですぅ!」
・シャルの絶叫によりリマは深い眠りから目覚める。シャルが喜んだのもつかの間、リマの瞳から一筋の涙が頬をつたう。なぜならリマはシャルの涙を浴びてしまったからだ。シャルの涙には触れた者の意志に関係なく涙を誘発する魔法がこめられている。シャルが泣き止まなければその魔法は解除できない。
リマ「うわ〜ん!ちょっとシャルぅ、早く魔法を解いて!」
シャル「わかりましたぁ、……ふえぇやっぱりダメですぅ!無の女神がこわくてぇ涙が止まりませんんん!!」
・シャルの涙を浴びたのはリマだけではない。無の女神の顔をおおうベールからも涙がしたたり落ちる。悲しみの象徴である涙が自分から流れ出たことに動揺した無の女神は、逃げるようにその場を後にする。
シャル「あれ、無の女神がいない……やったあ!ボクたちの勝利ですぅ!」
リマ「ふぅ〜……涙が止まったわ」
・場所は変わり体育館にて。恵実はそびえ立つとび箱と向き合っていた。段数は十段、九十センチの高さに及ぶ。クラスメイトはいつ恵実が走り出すのかと期待のまなざしを送っていた。
セキ「おい恵実。オレは反対だァ。今すぐ仮病を使って立ち去れェ」
恵実「いやだ」
セキ「テメェなあ!!」
恵実「みんなにわかってほしいんだ。とび箱は五段までしか跳べない、それが本当のあたしなんだって」
・セキをふり払いスタートを切る恵実。高鳴る心臓。肉薄するとび箱。踏切板の感触。ひざを曲げた瞬間にバランスを崩し、恵実は足首をひねって転んだ。
・恵実は友だちに連れられて保健室へ移動する。その途中で友だちが、恵実がとび箱を跳べなくて安心したと本心を告げた。友だちは『恵実』の変化に気づいており、密かに心配していたという。
恵実(あたしの身長は百三十六センチ。授業で当てられたときは、わからないなりに考えて答えを出す。そうだよあたし、楽したいがために大切なことを忘れてた。あたしの代わりなんて誰にもできないはずなのに。もう入れ替わりはやめようってリマに伝えないとね)
・足のねんざは軽いものであった。保健室で一人休んでいた恵実のところにセキが訪れる。
セキ「よォバカ。無茶しやがって」
恵実「あはは……」
セキ「ハァ、俺がもっと強引に止めとけば良かったなァ」
恵実「心配してくれてるの?ありがとう」
セキ「フン、ちゃんと冷やしとけェ」
恵実「えへへ、うん!」
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