初めてのお弁当作り?!
・あれからメィは毎晩恵実の部屋に現れ、セキに手作りお弁当を振る舞う。
メィ「セキさま、今日のメインはロールキャベツですわ!ぜひ召し上がってくださいまし♡」
セキ「毒とか入ってねーだろうなァ」
メィ「入ってませんわっ!」
セキ「ン、うめェじゃん。全部食っていいか?」
メィ「ええ!明日もお作りいたしますわ♡」
・メィは恵実にだけ見えるように勝ち誇った顔を浮かべる。メィの猛アタックを毎日見せつけられている恵実。ついに恵実のやる気に火がついた。
恵実「お願いシャル、あたしのお弁当作りの練習に付き合って!」
シャル「お安い御用ですぅ!それでは早速作ってみましょう!」
・一時間後、シャルの目の前に出てきたのは黒焦げの固形物だった。フロイデみたいですぅ、とのどまで出た本音をシャルは飲みこんだ。恐る恐る口に運びそれを噛みつぶすと、ガリッ、という食べ物からは想像できない音を立てて砕けた。シャルはその場にうずくまる。
シャル「恵実おねえちゃん、調理実習ってしたことありますぅ?」
恵実「うん!お皿洗いしてた!」
シャル「そうですかぁ、では、今日から猛特訓ですぅ!!」
・シャルは決して料理が得意ではなかったが、包丁すらまともに握ったことのない恵実に教えることは山ほどあった。かくして月日は流れ、おかずの原型が保てるくらいまでに恵実の腕は上達した。
恵実「今度こそどうかな?」
シャル「ん〜まぁ成功なんじゃないですかぁ?食べられなくはないですしぃ」
恵実(不安だなぁ〜……)
・お弁当の唐揚げに黒い手が伸びる。恵実とシャルが後ろをふり向くと、そこには無の女神の姿があった。
無「成功したとは思えない見た目……」
シャル「ひどいですぅ!恵実おねえちゃんが一生懸命作ったんですよぅ!」
無「努力をしても、結果が伴わなければ意味がない。はたして当の本人たちはどう思っているか……証明しよう」
・無の女神はフロイデを恵実のお弁当に振りかける。するとフロイデを吸収し巨大化した唐揚げと玉子焼きが、恵実とシャルを襲った。二体の叫び声は、まるでいびつな形に生まれてしまったことを嘆いてるようにも聞こえる。
無「フロイデの怪物よ。貴方たちの作り手に、ありったけの憎悪を向けろ」
・怪物はゆがんだ形の唐揚げと玉子焼きを量産し、恵実たちに浴びせる。怪物の哀しみの嘆きに共感した恵実はシャルの力を借りて変身するが、自責の念で怪物に反撃できずにいた。
セキ「オイオイなんだこの騒ぎはァ」
恵実「え〜んセキ、あたしが悪いのぉ!あたしがこの子たちを美味しそうな見た目にしてあげれなかったから、」
セキ「ハァァ?そこら中にウマそうな匂いがプンプンしてるのにィ?」
・怪物の連射する唐揚げと玉子焼きを、セキはどこからか取り出した割り箸でキャッチした。それらを迷いなく口へ放りこむセキ。
セキ「まあ見た目はイマイチだが、味はうめェぞ」
・唐揚げと玉子焼きの怪物は、元々恵実の手によって作られたものだ。恵実の想い人であるセキに味をほめられた怪物は満足し、フロイデを自ら体の外へ追い出してしまった。
無「ほう、味という結果は伴っていたのか」
セキ「他人の料理をけなす前に、まずテメェは作れんのかっつー話だよォ」
無「どうして、失敗作に失敗と言ってはならないのか……その感情、ワタシにはわからない」
・セキにおかずの味を称賛され、恵実の口角は緩みきっていた。有頂天になるあまり翌日包丁で指を切ってしまい、しばらくお弁当作りをおやすみすることになるのはまた別のお話。
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