泣き虫占い師にご用心?!

・最近恵実のクラスでとある占い小屋が話題になっている。それは子どもだけの前に忽然と現れ、中にいる占い師がどんな悩みでも解決に導いてくれるらしい。


友だち「そこの占い師さんがめっちゃ優しい人

で〜っ、思い出したら私ぃ、感動で涙がぁ……」

恵実「そ、そんなに泣くほど?!」



・友だちの話を聞き、恵実もその占い小屋のことが気になっていた。しかしセキに釘を刺されてしまう。


セキ「忽然と現れるッつーのが怪しすぎる。オレたちは正体不明のフロイデと戦ってるンだァ。その占い師がフロイデを生み出してる親玉だって可能性もゼロじゃねェ」

恵実「そっか、そうだよね。じゃあもし占いの館を見つけても入らないように、」

セキ「はァ?!なに言ってやがる恵実ィ!!」

恵実「ひっ……な、なにがおかしいの?」

セキ「そんなの敵をブッ潰す絶好のチャンスじゃねェかァ!!いいか恵実、もし占い小屋を発見したらテレパシーでオレを呼べェ。二人で突撃するぞォ」

恵実「でも敵だと決まったわけじゃ、」

セキ「用心するに越したことはねェよ。オレと恵実で変身すれば最強だろォ?」



・とある休日、ついに恵実の目の前に占い小屋が現れる。セキはフロイデの情報収集のため恵実とは別行動をしていた。恵実がセキを呼ぶ直前、カーテンの入口がゆっくりと開く。そこにはローブを被った子どもが一人、大きな水晶玉の奥に腰掛けていた。


恵実「なんだ、フロイデなんていないじゃん。ねえ占い師さん、年はいくつ?あたしと同じくらいかな?ひょっとして、お母さんやお父さんのお手伝い?」

占い師「……いいえ。ボクが占い小屋の主ですぅ」

恵実「え?」

占い師「ところで、先ほどあなたが仰っていたフロイデについて、もう少し詳しく教えてくださいな」



・気がつくと恵実は占い小屋の中にいた。あたりを見渡すが出口や窓はなく、水晶玉の左右に置かれたロウソクだけが室内を怪しげに照らし出す。恵実はうろたえ腰を抜かした勢いで、ちょうど後ろに置かれた椅子に座ることになる。


占い師「フロイデをご存知ということは、あなたが桜貝恵実さんですか?」

恵実「……はい、そうです」

シャル「う、うわぁぁぁぁぁん!!」

恵実「え、ど、どうしたの?!」

シャル「やっと会えましたぁ!ボク、セキおにいちゃんと離ればなれになってぇ、どうしたらいいかわかんなくてぇ……ひっく」



・占い師の正体は哀しみの神様見習いシャルであった。シャルはセキと同じ経緯いきさつで天界から送り出された男の子だ。地上に降り立って程なくしてセキに置いていかれたシャルは、天に助けを求めた。すると『フロイデ討伐の任務をセキと共に遂行している恵実を探せ』というお告げが届いたという。そこでシャルは占い師として道行く子どものお悩み相談を受ける傍ら、恵実の居場所について情報を集めていた。


恵実「っていうか、神様見習い同士でもテレパシーってできないの?」

シャル「何度もしてますよぅ、してますけど、セキおにいちゃんにミュートにされちゃったみたいで、全然繋がらないんですぅ」

恵実(テレパシーって着信拒否できるんだ)

シャル「ひどいですよねぇ!ボクたちが天界にいたころから、セキおにいちゃんって怒りっぽくってイジワルで、」

恵実「セキってイジワルなの?確かに短気だけど、あたしのために叱ってくれることもあるっていうか」

シャル「もしかして恵実おねえちゃんは、セキおにいちゃんのことが好きなんですか?」



・恵実の上ずった声からシャルは確信した。怒りの勇気を与えてくれたセキに恵実が心惹かれつつあることを。シャルは自称哀ならぬ『愛』の神として色恋沙汰には敏感なのだ。


シャル「ここは占い師の本領発揮ですねぇ。ふむふむ、ズバリ!今日のラッキースポットは、ショッピングモールですぅ ♪」



🌸



・ローブから真っ白なワンピースへと早着替えしたシャルは、意気揚々と恵実を外へ連れ出す。神様見習いはふつう人間には見えないが、自身の姿を実体化することも可能だ。


シャル「見て見て!ボク似合ってますかぁ?」

恵実「うん、とってもかわいいよ!」

シャル「本当ですかぁ?えへへ、ほめられると嬉しくて号泣しちゃいそうですぅ〜……!」

恵実「ええっ、また泣いちゃうの?!」

シャル「ボクを落ち着かせたかったら、一つお願いがあるんですけどぉ。ボクとデートしてくれませんか?」



・デートという言葉に少し面食らったが、シャルの愛らしい外見は女の子にしか見えない。そう考えた恵実は快諾し、シャルと一緒に洋服を見て回ることにした。ショッピングを楽しんだ帰り道、恵実とシャルはセキと鉢合わせする。


セキ「オイ恵実探したぞってチッ、シャルもいるじゃねぇか」

シャル「ちょっと!それが仮にも仲間に対する発言ですかぁ?!うぅ……今は泣くのをこらえてぇ……コホン、驚くなかれ、ボクたちはデート中なんですぅ!」

シャル(ふふふ、ここはセキおにいちゃんに嫉妬してもらう作戦ですよぅ!)

セキ「あーそう」

シャル「反応それだけ?!」

恵実(だろうとは思ったけどね……はは……)

セキ「一応恵実に伝えとくけどよォ、コイツの言うこと全部にマジになってたらキリ無いぞ。ある程度は放置でいい」



・一方その頃、恵実たちが通り過ぎたフレンチレストランの中では、男性が女性にプロポーズをしていた。その幸せなムードに引き寄せられ、フロイデが男女にとり憑いてしまう。教会を模した外見になったフロイデの怪物は、建物の窓をつき破って人々の行きかう大通りに現れた。怪物を初めて目の当たりにしたシャルは、恵実の後ろに隠れて震えている。


シャル「ひえぇこわいですぅ!」

恵実「シャルは安全な場所にいて。いくよセキ!」

セキ「クソがッ……あァ、かかってこい!」



・恵実はライトニング・エンジェルに変身しフロイデの怪物と対峙する。恵実の攻撃により怪物はよろけそうになるが、その近くでシャルが身を潜めていた。


恵実「シャルあぶな、」

シャル「うわああぁぁぁぁぁぁぁん!!」



・シャルとはかなり距離があいていたものの、そのけたたましい叫び声は恵実とセキが思わず耳を覆うほどであった。シャルの叫びを間近でくらった怪物は気絶してしまう。


恵実「つ、つよい……」

セキ「こっちの被害も著しいがなァ」



・フロイデを退治すると壊れた街は元通りになる。恵実とセキ、シャルは恵実の自宅に到着した。


シャル「いやぁ一体どうなることかと思いましたよぅ」

セキ「他人事みてーによォ」

恵実「セキ、この服似合ってるかな?シャルに選んでもらったんだけど、」

セキ「あー悪くねェんじゃねーの」

シャル「セキおにいちゃん!全然心がこもってないですぅ!」

セキ「オレそうゆーのわかんねェし。ッつーか、いつもの服じゃダメなのかァ?アレ似合ってンじゃん」

恵実「あ、まあ、そうだね……」

シャル(セキおにいちゃんを攻略するのはかなりハードル高そうですぅ。でも『愛』の神の名に恥じぬよう、恵実おねえちゃんを全力で応援しますよぅ!)

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