🌸My事情!!

よん

あたしの前世は『神さま』?!

・満天の星空の下。小学四年生の桜貝さくらがい恵実めぐみは、ベランダでレジンのキーホルダーを空にかかげていた。


恵実「うわあ、キーホルダーの中にお星さまが入ってるみたい!」



・ふいに視界が暗くなったかと思うとキーホルダーがない。恵実が地面を探していると、頭上から声がした。声の主は見知らぬ青年。ベランダの柵の上で高校生くらいの青年があぐらをかき、恵実のキーホルダーをもてあそんでいる。


青年「オホシサマだぁ?こんなちっこいキーホルダーに収まるわけねーだろォ」

恵実「わ、わかってるもん!そんな風に見えるってだけだよ!」

青年「ハッ夢があるこって」

恵実「っ、返して!そのキーホルダーはお父さんにもらった大切なものなの!」



・青年は恵実に向かってキーホルダーを投げ捨てる。青年の頭上には光の輪が浮かんでいた。


恵実「あなたは一体誰なの?」

青年「オレの名前はセキ。怒りの神さまになるために天界で修行してる見習いだァ」

恵実「怒りの……神さま、見習い?」

セキ「チッ!こっちが先に名乗ったんだからテメェも言えェ!」

恵実「え!えっと……桜貝恵実って名前で……桜が丘小学校に通ってて、」

セキ「まさか前世の記憶がねェのか」



・セキは再び舌打ちをするとベランダから身を投げてしまう。しかしその身体は宙を舞い、背中から翼を生やして恵実の前で停止する。


セキ「一回しか言わねえからよく聞けェ。テメェは誤って転生しちまった元神さま見習いだァ。オレは今から手筈を整えて、明日の夜にテメェを天界へ連れもどす」

恵実「ちょっと待ってよ!なにを言ってるのか全然わかんない……!」

セキ「ア゙ァ?つべこべ言わず明日の夜にここで待ってろォ!!」

恵実「ヒッ……!……うぅ、……」

セキ「泣くな。文句があんなら怒れ。感情を相手にぶつけろ」



🌸



・恵実が反論できないままセキは去ってしまう。夢であることを願いながら、翌日腫れた目をこすって恵実は学校へと向かう。


友だち「恵実ちゃんのキーホルダーいいな~!あたしにちょうだい!」

恵実「え、……うん」

友だち「やった~!恵実ちゃんは優しいから大好き!恵実ちゃんからもらったアクセサリーは全部机の上に並べてるんだ!」



・友だちと別れた瞬間恵実は首根っこをつかまれる。恵実の背後にはセキがいた。


セキ「ンだよ。オレにキーホルダーを寄越すのはダメで、アイツにはいいのかよ」

恵実「いやそういうわけじゃ」

セキ「じゃあなンだって言うんだァ?!」

恵実「だって、だって!!セキと違ってあの子はホントに欲しがってるんだもん!あたしの持ちものをあげたらいつも喜んでくれて、」

セキ「で?テメェは?」

恵実「……え?」

セキ「テメェ自身の事情はって聞いてんだよォ」

恵実「あたし、の事情は……ホントは……本当は、あげたくない。取られたくない。だってあたしの宝物だもん!」



・セキは友だちのポケットからキーホルダーをひったくる。セキは恵実以外の人間には見えていないようだ。


セキ「ほらよ。オレの器用さに感謝しろォ」

恵実「……ありがとう、セキ」



🌸



・放課後。友だちがなくしたキーホルダーを一緒に探してほしいと恵実を頼る。恵実は昨夜セキに言われたことを思い返していた。


恵実「探したってムダだよ。だってあたしが持ってるもん。このキーホルダーはあたしの大事なものだから、やっぱり返してもらったの」



・恵実の友だちは怒る。同時に恵実も怒る。初めて見せた恵実の表情に友だちは怯み、謎の黒い塊にとり憑かれてしまう。不定形の黒いそれは雄叫びをあげ、恵実の歴代のプレゼントを連結したような胴体をもつ巨大な怪物に変形する。恵実を呑みこもうとする怪物。それでも恵実は逃げなかった。恵実を包みこむ怒りのエネルギーはバトルコスチュームに変化し、強大なパワーを手に入れた恵実は怪物をやっつけることに成功した。


恵実「あなたの怒りに負けるもんか!あたしは超絶怒ってる!一方的に贈りものをする関係なんてイヤだ!あなたもあたしも、変わろう!」

セキ「なんだテメェ、いや恵実!言えるじゃねェか!オレも助太刀しねぇとなァ!!」

恵実「来てくれたんだね!」

セキ「オレが恵実の怒りを昇華する!」

恵実&セキ「「みんなに轟け!ライトニング・エンジェル!」」



・突如として人間界に現れた黒い塊の名はフロイデ。それらはとり憑いた人間の心に形態を合わせて怪物化するだけでなく、神さま見習いの存在をむしばむ厄介な魔物だ。天界の最高位である『天』から地上への滞在とフロイデの討伐を任された恵実とセキ。恵実はセキとともにフロイデを退治しつつ、フロイデ大量発生の謎にせまる。


セキ「受けとれ」

恵実「これって、あたしが今までに渡したプレゼント?」

セキ「クソが。プレゼントじゃねェだろ、アイツに奪われた恵実の宝物だ」

恵実「でも奪い返すっていうか盗むのはよくないんじゃ」

セキ「ア゙ァ?!オレもテメェも共犯だァ!!文句垂れんじゃねーよ!!」

恵実「……あはは、そうだねっ!」

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