第6話
久しぶりに会ったシュウは少しやつれているように見えた。
体調面は大丈夫なのか気になったけど、それ以上にシュウに会えたことが嬉しくて、それと同時に自分の醜態が頭をよぎり居た堪れなくなる。
私はシュウに会うと同時に深く頭を下げた。
誠心誠意、謝罪の気持ちを込めて。
そして今の私の本当の気持ちを伝えた。
もう二度と間違いないように。
でも返ってきたのは問い詰める言葉。
そして今まで一度も見たこともないほどシュウは怒っていた。それこそ恐怖を感じるほどに。
私は咄嗟に言い訳をした。
でもその言い訳はかえって私自身を傷つけた。
改めて思い知らされる私の浅はかさ。
シュウの言葉に何も返す言葉が無かった。
泣くのはズルいから、絶対に泣かないと決めていたのに、勝手に涙が溢れてくる。
ただ突きつけられる事実に贖いようが無くて。
シュウの初めて向けられる冷たい眼差しに心が耐えきれなくなって。
情けない私は終始泣くことしか出来なかった。
そうして折角の話し合いの場を無駄にしてしまった私は、また一人誰も居ない部屋へと帰る。
真っ暗な部屋の中でシュウの姿を思い出し涙が零れそうになる。
でも泣くわけにはいかない、優しいシュウをあそこまで変えてしまったのは私だ。
誰よりも私に優しかったはずのシュウを、その積み重ねてきた信頼と愛情を裏切った結果を突きつけられたに過ぎない。
初めて見る私に優しくないシュウ。
けれど同時に思い知った。
私は何を言われようがシュウの事が好きなのだと、間違いなく今でも愛していると。
でもそれは、私自身の甘えにもなっていた。
私も愛しているからシュウもまだ私を愛してくれている筈だと勘違いしていた。
だからだろう、誠心誠意謝れば、優しいシュウは許してくれるだろうとどこかで思ってしまっていたのだ。
だが当然の如く現実は甘くなくなかった。
そんな甘えが許される筈は無かった
私は生まれて初めてシュウから負の感情を向けられた。
喧嘩した時だってあんな目で私を見たことなんて無かった。
それが何より怖かった。
そして何よりも心が痛かった。
あんな目を向けさせる事になった自分が何よりも許せなかった。
だから私は変わると決めた。
やり直すのなら今の自分では駄目なのだと思い知ったから。
まず手始めにやらないと行けない事。それは自分のやった事に対する清算だ。
完全にマコト君……彼との関係を断ち切る。
その為には会社は辞めないといけないだろう。
辞職理由は、これも誤魔化すわけには行かない。
自分の罪を自覚する為にもハッキリと理由は伝えようと思う。
社内で不倫していたことを。
相手が後輩であったことも。
当然彼は今後出世コースからは外れる事になる。でも彼はまだ若い、いざとなれば他の会社でやり直しだって出来るだろう。
それからこの部屋も引き払う。
シュウにとってこの部屋はもう悪夢でしか無いだろうから。再構築したとしてこの部屋に戻りたいとは思わないだろう。
本当ならシュウと話し合って決めることだが今の状況では仕方ない。
取り敢えず仮住まい的に他の部屋を借りて、そこに私達だけの思い出が詰まった品々を避難させよう。
絶対シュウに戻ってきてもらう為にも私はこれから頑張らないといけない。
泣き言だけでは何も変わらない。
私が変わるしかないのだ。
これからはシュウだけしか愛さないという事を身を以て証明していく事で。
私は涙をこらえ、手始めに辞表を提出する為の準備に掛かる。
理由が理由だけに当然いい顔はされないだろう。
周囲の目も厳しいものに変わるはず。
でもそれは当然の罰だ。
本当に愛してくれている人を裏切った私が悪い。
あと、彼にもしっかりと伝えなければいけない。私が誰よりも愛しているのはシュウだという事を。
アナタとの関係は過ちだったのだと。
いま思えば全く持ってその通りなのだが、目先の恋に浮かれていた私はその事に気付けなかった。
一時的な感情よりも、大切にしないといけない想いがあった事も忘れていた。
今からそれを取り戻す事は出来ないけど、やり直すことは出来る筈だ。
私とシュウの絆は簡単に断ち切る事なんて出来ない筈だと信じて、今は私にやれる事をやって行こうと思う。
シュウとまた寄り添える未来を信じて。
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読んで頂きありがとうございます。
評価をしていただいた方には感謝を。
初めて長編のコンテストに応募します。
読んで頂けたら嬉しいです。
《タイトル》
『ダンジョンエクスプロード 〜嵌められたJKは漆黒宰相とダンジョンで邂逅し成り上がる〜』
https://kakuyomu.jp/works/16817330664753090830
こちらも引き続き応援してくれると嬉しいです。
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もちろん率直な評価として☆でも☆☆でも構いませんので宜しくお願いします。
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