第7話
まともな話し合いとはいかなかったが、俺的には一区切りになった。
アキちゃんも家族の事でもあり気になっていたようで、心配するメッセージが届いていた。
部屋に戻ると待ち構えていたようにアキちゃんが尋ねてきた。
「それで話し合いはどうなりました?」
「なんというか、話し合いにはならなかった」
俺は事の経緯を説明する。
「なんですかそれ、姉さん未だにシュウ兄さんに甘えすぎです。どうせ謝れば許してもらえるとでも思っていたんですよ」
「うんそうだね。謝罪の気持ちや反省している気持ちは本物だったと思う。でもさ、だからこそ許せないと言うか、ごめん上手く言葉に出来ない」
「良いんですよシュウ兄さんは。姉さんはもっと積み重ねてきた想いがどれだけ大事だったのかを思い知れば良いんですよ」
昔で言う激おこぷんぷん丸状態のアキちゃん。
俺の代わりに怒ってくれている姿に気が休まる。
「ありがとうアキちゃん」
「どうしたんですか急に? 私、お礼を言われるような事してませんよ」
びっくりした表情のアキちゃんに、つい昔の癖で頭を撫でてしまう。
「もう本当にどうしたんですかシュウ兄さん」
「まあ、そのなんだ俺的に一区切りついたんでな。今までの感謝を込めてだよ」
俺は笑って誤魔化す。
「そんなの気にしなくて良いですよ。そもそもが身内の不始末なんですから」
「うん。ただな、このまま世話になり続ける訳にも行かないしな。さっき言ったように一区切りというか、戦いはこれからだなんだが、ちょうどいい機会でもあるからな。部屋を借りて一人暮らしを始めようと思う」
「えっ!?」
俺の言葉に複雑そうな表情を浮かべるアキちゃん。
「そのなんだ、アキちゃんはまだ大学もあるし、俺としても十分世話になった。だからこれ以上迷惑をかけるわけには行かない」
今更だが、やっぱり義理の妹とはいえ、大学生の家に転がり込む社会人というのは世間的にも良くない。
「そんなの私は気にしないのに……」
アキちゃんはそう言ってくれるが、俺自身のプライドっていうものもある。
やはり妹に頼りっぱなしの駄目な兄にはなりたくない。
ということで俺はアキちゃんの部屋を出て一人暮らしを決めた。
部屋を決めた後は家から私物を送ってもらう事にした。
マリはそれすら嫌がったが、冷静にお互いのことを考えるための別居だと伝え、なんとか荷物を送ってもらった。
部屋を出ていく時最後までアキちゃんは渋っていたが、最終的には納得して送り出してくれた。
ただ送り出してくれたのは良いが、心配してほぼ毎日家にやってきては世話を焼いてくれるのは如何なものだろうと思う。
いや、俺的には助かるのだが、それでアキちゃんの負担が大きくなるのは本末転倒で宜しく無い。
それとなくもう一人でも大丈夫だからと伝えてみたが効果が無く。
「シュウ兄さんはまた一人にしたら全部抱え込もうとしますよね。そんなの見ていられません」
と、俺の心を見透かしたように言った。
実際、部屋に一人でいると、取り留めのない妄想と、言いしれないゴチャゴチャした感情が湧き上がり、マリにそれをぶつけたくなる。
きっと俺はあの映像を見たときから狂っているのだろう。
最愛だと思っていた存在が仮初だった事を知って、それでも俺が捧げてきた愛情は本物だと信じたかった。
でも、簡単に再構築しようとするマリの何を信じれば良い。
気付けば燻り続ける感情を誤魔化すように、怒りに身を任せ周りの物に当たり散らしてしまう。
そんな中でアキちゃんが来た時だけは、俺はまともでいられた。
マリと良く似た笑顔が俺を踏み止ませてくれ、大切な思い出を思い出させ、慰みをもたらしてくれていた。
過去にすがる情けない俺だけど、俺が完全に狂ってしまわないでいるのはアキちゃんのおかげだと感じていた。
だからアキちゃんが来る事を強く否定出来ずにいた。
それがどれだけ卑怯なことだと分かっていても……。
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読んで頂きありがとうございます。
評価をしていただいた方には感謝を。
初めて長編のコンテストに応募します。
少しでも多くの方に読んで頂けたら嬉しいです。
《タイトル》
『ダンジョンエクスプロード 〜嵌められたJKは漆黒宰相とダンジョンで邂逅し成り上がる〜』
https://kakuyomu.jp/works/16817330664753090830
こちらも引き続き応援してくれると嬉しいです。
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もちろん率直な評価として☆でも☆☆でも構いませんので宜しくお願いします。
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