第2話
家に帰ると室内は真っ暗。
今日は休みのはずのシュウが居ない。
声を掛けるが反応が無い。
珍しく一人で飲みにでも行ったのかと、頭も体も疲れていた私はさほど気にも止めず、着替えて寝室で直ぐに横になる。
翌朝、目覚ましが鳴り目を覚ます。
シュウは今日まで休みだったはずなので朝食を期待してリビングに行くと姿が見えない。
どうやら昨日から帰ってきていないらしい。
「はあぁ」
ため息がこぼれる。
久しぶりに飲みに行ってオールなんて全くお気楽なものである。
私はこれから仕事だと言うのに少しは気を使ってくれても良いのに。
心の中で愚痴りながら手早くシリアルで朝食を済ます。
出勤準備をしながらシュウも羽目を外すならと、メッセージで今日も遅くなると送っておく。
いつもの時間に会社につくと、人懐こい後輩が笑顔で挨拶をしてくる。
「おはようございますマリさん」
二つ年下の後輩で去年入ったばかりの新人君。
私が教育担当になって入社時から面倒を見ている。
どこか頼りなくて昔のシュウを思い出させる。
そんな彼、マコト君との間には人に言えない秘密がある。
それは不倫関係。
彼は入社当初から一目惚れだといって積極的にアプローチしてきた。
ちゃんと結婚していることも伝え、最初は軽くあしらっていた。けれど彼は諦めることなく何度も情熱的に私を求め続けた。
何度かの飲み会の時、その熱い眼差しに絆され関係を持ってしまった。
酒の勢いがあったとはいえ激しく後悔した。
その日は何度もシュウに心の中で謝った。
二度とこんな事はしないと、もうあれっきりだと心に決めたはずだった。
なのに断られても何度も私に迫るマコト君。
断られるたびにせつなそうに見る彼の瞳に決意が揺らいだ。
何度もこれで最後と思いつつ、何度も流され、いつの間にか情熱的に囁かれる愛の言葉と快楽に、忘れていた恋というものを感じた。
気付けばシュウに抱かれるより彼に抱かれる時間の方が多くなっていた。
先週もシュウの出張中を利用して彼と濃密な一週間を過ごしたほどだ。
私は完全にマコト君に恋していたのだろう。
学生時代には味わえなかった激しく熱い恋に。
そしてそれは今日も続く。
シュウに連絡していた通り、遅くまでマコトとの逢瀬を楽しむと、シュウが居るはずの家へと帰る。
部屋に入ると昨日と同じ、部屋の中は真っ暗で今日もシュウは帰ってきていない。
流石におかしいと感じ、シュウにメッセージを送ろうとするが朝に送ったメッセージに既読が付いていない。
不安になって電話を掛けるが出ない。
もしかして何かの事件にと心配になるが、探しに行こうにも夜も遅いしあてもない。
何より体は疲れているので、心配しつつもその日はベットで眠りについた。
そして朝目が覚める。
目覚ましはまだ鳴っていない。
寝室から出てシュウが帰ってきたか確認する。
部屋は静かなまま私ひとり。
メッセージアプリを確認しても既読にはなっていない。
改めて電話すると「電源が……」のメッセージ。
本当に事件に巻き込まれたのかも、なんて怖くなって朝のニュース番組を付ける。
ニュースは平凡な日常が流れだけで痛ましい事件の報道は無い。
もう一度「心配してます」とメッセージを送り、出勤準備をして会社に向う。
いつものようにマコト君の朝の挨拶。
私も笑って返す。
けれどその日はシュウからの返信がないか気になってスマホばかり気にしてしまっていた。
仕事が終わった後、マコト君から今日も誘われたが流石に断り、自宅に急いで帰った。
でも、その日もシュウが帰ってくることはなかった。
彼の両親は他界していて実家も引き払っていたので戻る場所なんてここしか無いはずなのに……。
翌日、シュウの会社に電話をしてみた。
どうやら彼は一週間休みを取っていたようで、知らなかった私は変な疑いを掛けられた。
彼の知り合いにも連絡を取ってみたが誰も知らないとの事だった。
私は悩んだ末。明日までになんの連絡も無いなら捜索願を出そうと決めた。
そして翌日。
私宛に封書が届いた。
離婚届と、
シュウから「さよなら」と書かれた手紙が添えられて。
意味が分からなかった。
なんでシュウが私から離れるのか。
まったく心当たりが無かったから。
――――それほどまで、この時の私は愚かだった。自分のことさえ省みることが出来ないほどに。
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読んで頂きありがとうございます。
評価をしていただいた方には感謝を。
初めて長編のコンテストに応募します。
読んで頂けたら嬉しいです。
《タイトル》
『ダンジョンエクスプロード 〜嵌められたJKは漆黒宰相とダンジョンで邂逅し成り上がる〜』
https://kakuyomu.jp/works/16817330664753090830
こちらも引き続き応援してくれると嬉しいです。
面白いと思っていただけたら
☆☆☆評価を頂けると泣いて喜びます。
もちろん率直な評価として☆でも☆☆でも構いませんので宜しくお願いします。
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