第41話 黄泉がえりの神殿へ
「大変なんです!みなさん!!」と、バーナードが焦って言った。
「どうしたんです、バーナードさん??」と、アラミス。
「先生が・・・長がいないんです!!」と、バーナード。
「落ち着いて、バーナードさん!順序だてて説明を!」と、シルウェステル。
「僕、午後3時あたりまで、先生から、先生の部屋の中の重要書類の整理整頓をするように、と言われていたんです。指示書通り、いらない書類は暖炉の火で燃やしました。そしたら、午後5時ごろ、先生がふらりと帰ってきて、ちょっとの間留守にする、と言ったきり、帰ってこないんです」と、バーナード。
午後5時頃。ハインミュラーとロイが、長老が怪しいという話をしていた頃だ。
「おい、確か、長老は、光の神殿の石像の間を、アテナ神からの指示と言って、立ち入り禁止にしたよな。そこが気になる。アニキ、ついてきてくれるか」と、ハインミュラー。
ロイが頷き、二人は駆けていった。
「ハインミュラーさん、俺はここに残って、長の部屋の残されたものを調べてみます。前世の賢者としての知識を使って、思いあたるところがちょっとあって」と、シルウェステル。
「分かりました、シルウェステルさん」と、ハインミュラー。アラミスは、シルウェステルとバーナードと一緒に、長の部屋へと向かう方を選んだ。
「ヅラはいるのか」と、アラミスがバーナードに尋ねた。
「消えた長を探す役目を頼みたいのだが・・・・」と、アラミス。バーナードはすぐさま駆けて行って、ヅラの私室を覗いてみる、と言った。
*
「なんだこれは!!!」と、光の神殿の奥の間に入って、10体ほどの石像すべてが粉々に砕け散っていた。あまりのむごたらしさに、ロイとハインミュラーは言葉を失う。
「やつ・・・スマローコフの仕業か、それともシェムハザが復活しかけていてこうなったのか・・・??」と、ロイ。
「どっちにしろ、ことは急を要する。ここに立ち尽くしていてもしょうがない、アニキ、アニキはシルウェステルさんのところに、俺はヅラさんを探す!」と、ハインミュラー。
*
ヅラ・ラ・スコーニは、剣・・・今では七星剣を愛用してはいる・・・・を携え、馬を駆っていた。
この「封印の国・ハートフォードシャー」から出るには、森の奥深くにある神殿・「黄泉がえりの神殿」に行く必要がある。そこに行かれて、下界・・・世界アラシュアの小国地帯に逃げられたら、奴を逃すことになってしまう。
「黄泉がえりの神殿」は、比較的小さな、簡素な神殿であった。そこは、1000年の使命を終えた12使徒の誰かが天国に上がる場所でもある。
もっとも、スマローコフの場合は、彼は太古の昔からこの12使徒の長だったと聞いているので、天国に上がるためではなさそうだ。下界に逃げて、どうするつもりなのだろうか、とヅラは考えた。
*
「どうです、シルウェステルさん??」と、バーナードが不安そうに聞く。長の私室の調査だった。
暖炉には、燃やした書類の灰が積もっている。
「俺をあまく見すぎですね」と、シルウェステル。
「俺も、やろうと思えば、賢者時代と同じように魔法が使えるのを知らないのかな」と、シルウェステルがおかしそうに言う。
「灰さえあれば、もとの書類に戻せますよ。復元できます」と、シルウェステル。
「こっちに、森に捨てようと思っていた灰の入った満杯の袋があります、シルウェステルさん!」と、バーナード。
「よしよし、すぐにしましょう!」と、シルウェステル。
「地の精霊を使うんですよ、紙は木からつくられていますから、」とシルウェステルがぶつぶつ言いながら、呪文を唱え、暖炉で燃えた灰に呪文をかけた。
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