第20話 朱雀の加護と青龍の加護
*
竜になったセレスに乗り、3人(2人+竜一人)は、ハートフォードシャーの国の東部にある町・フロンテーラにやってきた。セレスたち12使徒の聖人の住む居住区からはだいぶ離れた地区だった。
美しい花畑が・・・花が群生する原っぱに降り立った3人は、町を見渡した。美しい、赤と青と黒を基調とした家々。
「セレス、セレスはここで待っていてちょうだい」と、ゼルフィーネが言って、セレスの腕をさすった。
「つれてきてくれてありがとうね、セレス!」と言った。
ドラゴン化したら、それだけで聖人の力を使う。最悪、ドラゴンと人間の行き来を頻繁にすると、しばらくは人間に戻れなくなる。なので、セレスはこの花畑の原っぱで待機だった。
『この景色を堪能しとくわ。行ってらっしゃい、ゼルフィーネ、それにリゼティーナ姉さん』と、セレスは言って、満足そうに口から少し火を吐いた。
ゼルフィーネとリゼティーナは、連れだって、町の教会へと向かった。
教会の高い尖塔が町の風景によく映える。
「お姉ちゃんたち誰??」と、町の子供たちが二人に近付いていた。
「これこれ、聖人様たちに失礼よ、お辞儀をしなさい、ダヌシェ」と、女の子に声をかける母親。
「いいんですよ」と、リゼティーナは言って、にこにこと笑った。ゼルフィーネは、たまたま持ってきていたキャンディを、その女の子たちに配っていた。
二人はそんなこんなで、フロンテーラの町の教会にたどり着いた。
「おお、聖人様!!お待ちしておりました!!」と、若い教会の神父が言った。
「神父様、わたくしたちは、朱雀の加護と青龍の加護を持参いたしました。12使徒・5人の乙女の巫女の一人、リゼティーナと申します」
「わたくしはゼルフィーネと申します」と、ゼルフィーネもにこりと微笑み、持ってきたバッグから小さく切られた布をとり出した。
「これはこれは、遠方はるばるお疲れ様です。今年はうちの順番と聞いておりましたが・・・」と、神父。
「巫女様、奥の部屋で休まれてください。そのうちに、町の者で、加護が必要な者を連れてきます」と、シスターの一人が言った。
「かしこまりました、お言葉に甘えますわ」と、リゼティーナが言った。
二人は案内された小部屋のテーブルと椅子にすわり、息を吐いた。
「ふう、任務もなかなかに疲れるわね、リゼティーナ!」と、ゼルフィーネが言って、用意してきた、朱雀の加護が書かれた魔法陣の布を並べ、不備がないかもう一度確認していた。
「私も、青龍の加護を授けねば、ね!こんなところで疲れてちゃだめよ、ゼルフィーネ、ここからじゃない」と、リゼティーjナ。
やがて、紅茶を持ったシスターたちがやってきて、二人に手渡した。
ほどなくして、病人や弱い立場にある人たちが教会に集まった。
「妻を10年前に亡くしましてね」と、とある老人が言った。
「もう生きる気がせんのです」と、老人がぽつりと言った。その姿に、リゼティーナはふとリュディガー神父を思い出していた。
「絶望も人生の一部なのです、ご老人」と、リゼティーナが言った。
「あなたには青龍の加護を授けましょう。希望が出るおまじないをしておきましょう」と言って、リゼティーナが呪文を軽く唱え、手で布の護符に紋章を浮かび上がらせた。
聴衆から、「おお!!」という歓声があがる。
「ありがとうございます、巫女様!」と言って、護符を受け取り、老人は教会を去っていった。
こうしてゼルフィーネとリゼティーナは、こうしてほぼ半日、困りごとのある住人からの要望に応え、加護の護符をかけてあげたのであった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます